世論調査は信用できない、米大学教授トランプ氏の再選を予想

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アリゾナ州立大学のクリストス・A・マクリディス(Christos A. Makridis)研究教授と、作家で共和党員のジョナサン・ジャクボウスキー(Jonathan Jakubowski)氏は、The Hillに投稿した論説で、各社の世論調査ではバイデン前副大統領が優位に立っているが、調査には3つの問題があると指摘。トランプ氏が再選する可能性があると主張している。

質問のトーン

行動心理学では、質問の仕方で、想定される回答の範囲があらかじめ定められることが分かっているという。ギャラップの研究では、同じ調査で同じ話題に関する質問であっても、使用する言葉によって回答が大きく異なることが分かった。メタファーを使用することで、共和党と民主党の間に以前から存在する違いの重要性を矮小化することさえも可能だという。

人は一般的に、論争を回避するために、社会的に望ましい回答をする傾向がある。トランプ氏に投票するというのは、社会的には好ましい回答とはいえず、2016年の選挙では、このことが顕著に現れたと述べた。
ケイトー研究所(Cato Institute)の調査によると、3分の2近くの米国人が、政治的環境は非常に厳しい状況に置かれており、政治に関して正直な意見を述べたくないと回答している。

回答者のサンプル

誰が世論調査に回答するかは、固定電話か携帯電話かなどの手段や場所、サンプル数、人口統計学的要因などによって、大きく異なる。また回答者が、必ずしも投票する可能性の高い集団とは限らないという。

世論調査には誤差幅が含まれているが、元となるサンプルが、人口を反映していない場合、その誤差幅も信頼できないものとなる。

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2016年の大統領選の世論調査が失敗した要因について、ある研究者は「セルフ・スクリーニング」を指摘している。例えば、調査員に対する不信は、トランプ支持者による低い回答率をもたらす。ラスムセン(Rasmussen)の研究では、投票する可能性が高い有権者で、トランプ氏を「強く支持する」人の17%が、次回の選挙で誰に投票するつもりか、他人に知らせる可能性が低いと述べている。一方で、大統領の業績に「強く不支持を表明する」有権者で、同様の回答を行った人は、8%だった。

サンプリングの方法だけでなく、十分な回答数も重要だと指摘する。トラファルガー・グループ(Trafalgar Group)は、最小のサンプル数を1,000人以上とすることで、「静かなトランプ支持者」を突き止め、2016年の大統領選で激戦区における世論調査を成功させた。同社のRobert Cahaly氏は「600人以下の回答数は誤差率が高すぎて、信用することができない」と語っている。

ニュースサイクル

激戦区では、その瞬間の出来事が有権者の判断に大きな影響を与える。最近では、ニューヨークポスト紙がバイデン氏が息子のビジネス関わった可能性を報じた。これらのニュースで、有権者の判断がトランプ氏に傾く可能性がある。また経済回復が続けば、復興のニュースがトランプ氏の追い風になるとしている。

各世論調査のエラーを補うため、リアルクリアポリティックス(RealClearPolitics)は、調査の平均を算出している。多くの世論調査は一方向でエラーが発生しているため、依然、存在するバイアスが反映されると主張した。

▽リアルクリアポリティックスの世論調査

トランプ氏に追い風

ギャラップが22日に公開した調査では、56パーセントの有権者が4年前より良い状態になっていると回答した。この数字はパンデミック中の回答としては、「特筆すべき」結果だと、教授らは主張する。

激戦区の8州について、ギャラップのデータと有権者のデータを組み合わせ、深く掘り下げて調査したところ、良くなったと回答した人の割合が多い州では、バイデン氏の支持率は低く、トランプ氏の支持率が高かったという。

ペンシルベニア州の登録有権者に関しては、5月の時点で民主党員の数が、共和党員を80万3427人上回っていたが、10月にはその差は70万853人に縮小した。2016年以降に共和党に登録した有権者数は、民主党の7倍に上っており、ノースカロライナ州やフロリダ州でも同様の傾向がみられるという。

マクリディス教授らは、回答者が何を答えるか把握し、サンプルが人口を反映している限り、世論調査は素晴らしいものであるが、そうでない場合は、ミスリーディングにつながると指摘している。