エリザベス女王が最もお気に入りの米大統領は?

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­­8日、96歳で亡くなった英国のエリザベス女王。70年に及んだ在位期間中、15人の英首相を任命し、14人の歴代米大統領のうち13人と面会した。中でも女王のお気に入りだったのが、1980年代に在職したロナルド・レーガン大統領で、共に趣味の乗馬を楽しむなど親しい仲だったと伝えられている。レーガン大統領に関する著書を複数手がけた歴史研究者、クレイグ・シャーリー氏がFOXニュースへの寄稿で2人の友情を物語るエピソードを紹介している。

シャーリー氏によると、レーガン大統領の側近だったマーク・ワインバーグ氏はかつて、「レーガン家と英王室とは盟友としての関係を築いていった」とし、訪英時の女王との朝の乗馬は大統領が最も楽しんだイベントの一つだったと、2人の関係について語っていたという。

さらにシャーリー氏は、女王と夫のフィリップ殿下が1983年2月から3月にかけて10日間の日程で米西海岸を訪問した際、大統領が所有していたカリフォルニア州サンタバーバラの牧場「レーガン・ランチ」を訪問したエピソードを紹介。当初は女王所有のヨット「ブリタニア」でセーリングの予定だったが悪天候で中止になり、代わりに牧場に向かうことになった。

牧場までの道のり約11kmは、ガードレールもなく急勾配で未舗装の道が続く。大雨の影響で状況がさらに険しくなり、途中からはリムジンで進めずSUV車に乗り換えなければならないほどだったという。牧場で催された会食のメニューは、レーガン夫妻の好物メキシコ料理で、英国であまりなじみのないエンチラーダやフライドビーンズ、ワカモーレなどが振る舞われた。

自身も何度となく牧場を訪れたことがあるというシャーリー氏は、牧場への道について「非常に険しい道路で、しかも猛烈な豪雨の中のドライブで女王が味わった恐怖を思うと、察するに余りある」とつづっている。しかし女王はのちにこの経験について「楽しく、非常にワクワクした」と語っていたという。

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3月2日に女王一行は、サンフランシスコを訪問。「エア・フォース2」からナンシー夫人とともに、空港に降り立った。翌日は、レーガン大統領主催の晩餐会に出席した。ロナルド・レーガン大統領図書館によると、この時のスピーチで「訪問前から、私たちの伝統の多くが米国に渡っていることを知っていましたが、天候までとは知りませんでした」と話し、笑いを誘った。

さらにこの翌日、女王は、レーガン大統領夫妻をブリタニア号に招き入れ、結婚31周年を祝して夕食会を開いた。レーガン大統領はこの時の思い出について「魔法の夜だった。女王夫妻は本当に温かく、好感の持てる方々だ」と日記に記していたという。

2人の親交は、レーガン大統領が退任してからも続いた。退任した1989年の6月、女王は市民となったレーガン氏を英国に招いて、ナイトの称号を与えた。米国大統領経験者でナイトの称号を受けたのは、アイゼンハワー大統領に次ぐ2人目で、のちにジョージ・H・W・ブッシュ大統領も授与されている。

レーガン氏が死去した際、体調が思わしくなかった女王は葬儀に参列できなかったが、代わりにチャールズ皇太子がワシントンを訪れた。

1983年の訪米後、女王はレーガン氏に宛てた手紙で「アメリカとイギリスが、時折互いに考え方や方針を共有していると公に確認し合うのは正しいことです。今回の訪問が国家間の友情をさらに強め、我々はどんなときも同士であると世界に伝えることにつながればと望んでいます」と記していた。

女王はレーガン大統領へ送った手紙で「ミスター・プレジデント」と公式の宛て名を使っていたが、中には、最後に親しみを込めて「あなたの良き友人、エリザベスより」と締めくくられているものもあった。