ハイランドパーク銃乱射事件 重要参考人のラッパーの素顔とは?

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4日、イリノイ州ハイランドパークで起きた銃乱射事件で、捜査当局は重要参考人としてロバート・ボビー・E・クリモ III氏(21)を拘束したことを明らかにした。

事件が起きたのは午前10時15分頃。3年ぶりに開催された独立記念日パレードの観客らが標的となり、少なくとも6人が死亡、36人が負傷した。地元警察は、事件後まもなく行われた会見で、犯行に使用されたのは「強力なライフル」で、犯人は建物屋上から発砲したと説明した。また、現場からライフルを回収したとも話した。

クリモ氏が拘束されたのは、現地時間の午後6時30分。シカゴ北部のハイウェイでホンダ車を運転しているところを発見された。最初の停止命令を無視して逃げようとしたが、その後まもなく拘束された。現在、SNSに拘束の様子を撮影した動画が投稿されている。

ハイランドパークはシカゴ近郊にある人口3万人ほどの都市。シカゴの北約40キロメートル地点にあり、ミシガン湖に面している。裕福なエリアとして知られ、2020年の国勢調査によると、世帯年収の中央値は14万7,067ドル(約2,000万円)となっている。USA Todayによると、市内の住宅の10%以上が、100万ドル以上の資産価値がある。人種構成は住民の82.3%が白人、ヒスパニック8.9%、アジア系3.7%、黒人1.6%。

周辺の大きな邸宅郡はトム・クルーズの出世作「卒業白書」やマシュー・ブロデリック主演「フェリスはある朝突然に」、「ホームアローン」といった有名映画の撮影にも使用されている。

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地元テレビ局によると、クリモ氏の父親ボブ・クリモ氏はハイランドパークでデリ「Bob’s Pantry & Deli」を営んでおり、2020年の市長選にも出馬したことがあるという。

インタビューに答えた叔父によると、クリモ氏は大学に通わず、2年前までカフェ&ベーカリーチェーン「パメラブレッド」で働いていた。現在は無職で、アマチュアのラッパーとして活動していた。同じ敷地に暮らしていたが、普段は挨拶をする程度だった。家の周囲で時々手伝ってくれることもあったという。内向的でおとなしい性格で、危険な兆候はなかった。前日の晩にも挨拶を交わしたが、「こんなことをするきっかけは何も見当たらなかった」と話した。CBSニュースは、4日午後、ハイランドパーク北部のハイウッドにあるクリモ家の周囲を警察が取り囲んでいたと伝えている。

「アウェイク・ザ・ラッパー」という名で音楽活動しており、IMDBには「シカゴ出身の米国人ラッパー、歌手、ソングライター、役者、ディレクター」と記されている。11歳で音楽をネットで公開し始め、2016年に発表した「By The Pond」で注目を集めたほか、2018年10月に発表した「On My Mind」がヒットし、ストリーミングで数百万再生されたとある。純資産の推定額は10万ドルとも記載されている。スポティファイのチャンネルでは、再生数が200万回以上あったと伝えられている。

FOX32によると、2021年10月に公開した曲「Are You Awake」のビデオには、ライフルを他人にむける絵など、犯行との関連を示す部分があった。ビデオにはこのほか、ケネディ大統領暗殺の実行犯とされたリー・ハーヴェイ・オズワルドの新聞記事の画像、撃たれた犠牲者から血が噴き出るイメージなどがあった。

↓ツイッターに出回っているミュージッククリップの一部

事件後、クリモ氏がトランプ前大統領の集会に参加した際に撮影した写真が出回ったが、ワシントンポスト紙は、本人のSNSの投稿からはトランプ支持者だったかどうか不明だとしている。専門家は同紙に、これまで明らかになったものからは、政治的またはイデオロギーに基づく動機を示すものはなく、犯人が人種差別的信条をオンラインに投稿していた5月のニューヨーク州バッファローの銃乱射事件や、2019年のエルパソ銃乱射事件とは対照的だと指摘している。