肌が腐る「ゾンビ・ドラッグ」新たな薬物が米で拡大

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米国の都市部で新たな薬物が蔓延しつつあるとして、専門家が警鐘を鳴らしている。

「キシラジン」は動物用の鎮静剤で、これを含んだドラッグは「トランク」や「トランク・ドープ」、「ゾンビ・ドラッグ」などの俗称で呼ばれている。米北東部のフィラデルフィアで使用され始め、その後、サンフランシスコやロサンゼルスへと拡大しつつあるという。最近では、フェンタニルなど他の薬物の中から検出された例もある。

ニューヨークタイムズによると、フィラデルフィアでは2006年の時点で、馬の鎮静剤を使用した薬物が確認されていた。ただし、本格的に広まったのは、パンデミック以降だという。同地区の薬物防止センターへの訪問者数は、過去3年で300%以上増加。2021年には、研究室で検査した薬物のうち、90%からキシラジンの陽性反応が示されたという。

一部の疫学者はパンデミックの期間中、獣医の処方箋や医師のサプライチェーンから流出したキシラジンが、安価なオピオイドのフィラーとして注目されたと推測している。こうしたドラッグの価格は、ヘロインの半値で流通しているという。

市内の麻薬取引の中心地ケンジントンにある医療サービスセンターの職員はタイムズに、地域の「供給は飽和状態」で、対応は「すでに手遅れ」と現状を語り、他の地域への拡大に警鐘を鳴らした。

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トランクを摂取した場合、過度の眠気や呼吸抑制、低血圧などの症状を引き起こす。繰り返し使用するうちに、急速に皮膚に傷が広がる。これらは硬い壊死組織となり、治療せずに放置すると、体の一部を切断するケースに至る場合もある。

右足を切断した今も、禁断症状を抑えるために薬物を使用し続ける38歳の女性は、「トランク・ドープは、文字通り肉を食べる。最高の自己破壊だ」と語っている。

ケンジントンのストリートの様子。28歳の男性はSkyニュースに、足と指に2つの穴ができたと明かし「人体をゾンビ化する」と話した。

食品医薬品局は1962年、獣医師が家畜に使用する鎮痛剤としてキシラジンを認可した。動物や人間への規制物質としては統制されておらず、「法的にグレー」の状態となっており、監視の対象から除外されている。タイムズは病院で薬物中毒のスクリーニング検査が行われるのは稀であり、オピオイドに比べ、人間に対する研究結果もほとんどないと伝えている。トランクを過剰摂取した場合、オピオイド拮抗薬のナルカンやナロキソンを投与しても効き目がなく、蔓延した場合、新たな対応策が必要となる。

昨年発表されたデータによると、ニューヨーク市では、薬物のサンプリングの25%からキシラジンが検出された。36州とコロンビア特別区でも確認されているという。

ロサンゼルス郡公衆衛生局の薬物乱用防止管理部長ゲイリー・ツァイ博士はロサンゼルスタイムズに、米国は「史上最悪のオーバードーズ危機の最中」にあると指摘。トランクの利用者の拡大により、過剰摂取による死亡者が増加する恐れがあると警戒感を示した。