バイデン新大統領の就任でQアノンは終了?

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トランプ
Julian Leshay / Shutterstock.com

ジョー・バイデン氏が新大統領に就任した20日、8kunの元管理者、ロン・ワトキンス氏は、メッセージサービスのTelegramからフォロワーに、トランプ氏の退任を認め、「われわれは最善を尽くした。元気を出して、元の生活に戻らなければならない」とメッセージを送った。

Qアノンは、2017年に「Q」を名乗る匿名の人物による掲示板の投稿から始まった陰謀論。闇の政府(ディープステート)の政治家やハリウッドのセレブリティが、大規模な児童買春ネットワークに関与し、この中で、悪魔的儀式の対象となり性的虐待を受けた子供から得られるアンチエイジングの化学物質を入手しているなどと主張している。トランプ氏はディープステートとの戦いを密かに主導しており、犯罪に関与する政府高官らを大量に逮捕または処刑する裁きの日を計画しているなどと考えられている。

8kunは、「Q」がメッセージを投稿することで知られるメッセージボード。オーナーは父親のジム・ワトキンス氏。本人は否定しているが、一部の批評家は、Qの投稿はロン氏によるものではないかと疑っている

ロン氏は選挙後、SNSで陰謀論めいた不正説を度々投稿。この中には、トランプ氏がリツイートし、大量に拡散される投稿もあった。また選挙結果を覆そうとするトランプ支持者の弁護士に協力し、訴状に宣誓供述書を提供するなどしていた。

なお、議事堂襲撃の2日後、ツイッターは、マイケル・フリン元大統領補佐官とシドニー・パウエル氏らとともにワトキンス氏のアカウントを停止した。

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支持者ら分裂

Media MattersでSNSの偽情報や過激派の活動を調査するアレックス・カプラン氏は、Telegramで20日に実施した調査の結果を公表し、Qアノン支持者は、誤りだったと気がついた人と、固執する人、「ゴールポストを動かす」人々に分かれたと報告している。

調査では、回答者の33%が、バイデン氏は就任するが、軍隊とトランプ氏には近い将来の計画があると答えた。

このほか、Telegramで多くのフォロワーを獲得しているQアノン関連のチャンネルでは、エリック・トランプ氏のツイートにあった「最良はこれからだ」といった一般的な文言や、トランプ氏が退任演説で発した「何らかの形で戻ってくる。もうすぐ会おう」といった言葉を指して、トランプ氏が政権に居座ることの証と示唆するものもあった。さらに、バイデン氏はトランプ氏の計画に協力しているといった新説を示す内容も投稿されていた。

バイデン氏協力説はさすがに不評を買ったとみられ、後になって、発信者本人が距離を置くメッセージを投稿している。

これとは別に、デイリービーストの記者、ウィル・ソマー氏がシェアしたQアノングループのチャット画面には、「われわれはおしまいだ」「トランプにだまされた」「俺たちは売られた」「ムカムカする」「失望以外の何ものでもない」など、大量逮捕がないことを理解した支持者らの落胆や怒りの言葉が並んでいる。

就任式当日、戒厳令、大停電、デマがメッセージアプリで拡散

ニューヨークタイムズは13日、過去1週間で数千万人が「Signal」や「Telegram」をダウンロードしたと報じた。Signalは、エンドツーエンド暗号化技術を利用したメッセージアプリ。Telegramはメッセージ機能に加えて、大規模なグループチャットが人気だという。

Telegramは12日、直近3日間で2,500万人のユーザーを獲得し、ユーザー数が5億人を超えたと発表した。Signalは11日だけで130万人を獲得し、昨年の1日平均ダウンロード数5万件を大きく上回ったと伝えられている。

ダウンロード数の急激な上昇は、大手SNSによる大量のアカウント停止やParlerの閉鎖のほか、WhatsAppのプライバシーポリシーの変更に伴う、ユーザーの懸念の高まりと関係している。ツイッターは、6日のトランプ支持者らによる議事堂襲撃事件後、さらなる暴動を扇動する恐れがあるとしてトランプ氏のアカウントを永久凍結した。さらに12日、Qアノンに関連する7万アカウントを停止したと発表した。

Global Network on Extremism & Technologyで白人至上主義者の先鋭化を研究するMeili Criezis氏は、Qアノン支持者らのアプリの乗り換えを狙って、Telegram内で白人至上主義者の民兵組織による、「非ラディカル」なトランプ支持者を標的にしたリクルーティング活動が行われていると報告している。

Criezis氏はまた、Telegramの白人至上主義者とネオナチのグループでは、トランプ支持者のチャットに潜入する戦略や、新たに流入してきた”パーラー難民”をラディカライズする方法に関する議論が展開されていたと指摘している。

さらにAP通信は、Telegramで18日、ジョン・ハイテン(John Hyten)統合参謀本部副議長の偽チャンネルが作られ、一晩で登録者が20万人に到達したと報じた。

チャンネルの投稿は、緊急放送や緊急警報システムが使用される可能性をほのめかしており、トランプ氏が緊急警報や反乱法を発動して就任式が中断するといった偽情報に類似した内容だっという。また複数の投稿には「great awakening」や「storm」「nothing can stop what is coming」といった、Qアノンサポーターの間でポピュラーな標語が含まれていたという。

NBCニュースも、就任式当日にトランプ氏が戒厳令を発動したり、全国的な停電が発生したりするなど、根拠不明なデマが拡散されていたと伝えている。同局のインタビューに答えたある女性は、弟からアマチュア無線を買うように連絡があったと語った。弟は、トランプ氏が計画を実行に移すと、停電が起きて通常の電話が使用不可能になると説明。アマチュア無線が数少ない連絡手段だと話したという。

NBCが、Qアノン関連アカウントの一部として、この弟のSNSアカウントをレビューしたところ、議事堂襲撃事件以降、ますます現実離れした内容が投稿されていたという。同社がレビューをしたこれらのアカウントの多くに、トランプ大統領が就任式当日に戒厳令を発令して、民主党員を処刑するといった考えが示されていたという。