Metaのザッカーバーグ氏 なぜ謝罪?議会公聴会がヒートアップ

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米国の上院司法委員会で31日に行われた公聴会では、オンラインの児童の性的搾取問題をめぐって、SNS企業のトップらが議員からの厳しい追求にさらされた。傍聴席には被害に苦しむ子を持つ親や命を絶った児童の保護者らが出席。Meta社のマーク・ザッカーバーグCEOが自ら謝罪の意を表明する場面もあった。

少数党の共和党のランキングメンバー、リンジー・グラハム議員(サウスカロライナ)は冒頭、「ソーシャルメディア企業は、危険なプロダクトを設計、運営している。命を破壊し、民主主義に脅威を与えている」と主張。ザッカーバーグ氏を名指しし、「そのようなつもりではないことはわかっているが、あなたの手は血塗られている。あなたは人々を殺すプロダクトを手にしている」と語った。

公聴会で議員らは、プラットフォーム企業の安全対策不足を問いただすとともに、被害者らが法的責任を追求することを可能とする法案「STOP CSAM Act」をはじめとした一連の規制法案について、各社トップに立場を明らかにすることを求めた。

ザッカーバーグ氏のほか、X社のリンダ・ヤッカリーノ氏、TikTokのショウ・チュウ氏、Snapのエヴァン・シュピーゲル氏、Discodeのジェイソン・シトロン氏といった各社のトップが出席した。

グラハム議員は「結論を言えば、あなた方は訴えられることはないが、訴えられるべきだ」と続け、「企業によって虐待されているすべてのアメリカ人に、われわれが包括的な賠償保護を与えるべきだ」「今こそ230 条を廃止する時だ」と語った。

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プラットフォーム企業は通信品位法230条に基づいて、パブリッシャー扱いされずに、多くの場合、ユーザー投稿に関して法的責任を問われない。

業界最大手のザッカーバーグ氏にとりわけ厳しい質問が浴びせられた。

テッド・クルーズ議員(テキサス、共和党)は、インスタグラムのアルゴリズムは、小児性愛者が児童虐待コンテンツを探し出すのを手助けしていると非難。児童虐待に関連するハッシュタグの検索結果に表示される警告画面の実例を提示し、「”リソースを確認する”または”とにかく結果を見る”」の2択が表示されるとした上で、「ミスター・ザッカバーグ。君はいったい何を考えているのだ」と問いただした。

ジョシュ・ホーリー議員(ミズーリー、共和党)は、SNSの使用と若者のメンタルヘルスの関係は科学的に証明されていないと主張するザッカーバーグ氏に、Metaの社内研究者の調査で「インスタグラムが10代のかなりの若者に有害」であると結論づけていると反論。表向きは問題がないとしながら、「あなたは内部では自分のプロダクトが最悪であると認識していた」と非難した。

13歳から15歳の少女の37%が望まないヌードコンテンツにさらされたとする調査を記した内部メールを示し、「誰を解雇したのだ」「被害者に補償をしたことはあるのか」と詰問。「われわれの仕事は、業界をリードする有害コンテンツを特定するツールを構築することにある」と釈明するザッカーバーグ氏に、「全国テレビの前で、今すぐ被害者に謝罪をしますか?」と、謝罪を要求した。

これを受け、ザッカーバーグ氏は立ち上がり、犠牲になった子供たちの写真を掲げる親たちを前に「皆さんが経験したすべてのことを申し訳なく思う。皆さんのご家族が苦しんだことを誰も経験すべきではない。だからこそ我々は多額の投資をし、業界全体で努力を続ける」と謝罪した。

マーシャ・ブラックバーン議員(テネシー、共和党)は「あなたにとって子供たちは最優先ではなく、製品だ。金儲けの方法と考えている」と批判。児童性的虐待に関連するコンテンツについて、議会のスタッフがMeta社に働きかけた後になってはじめて取り下げたとし、「明らかに略奪的なコンテンツがあなたのプラットフォームの利用規約に違反しないのか」と説明を求めた。

「不適切なコンテンツを特定するわれわれのツールは業界トップであり・・・」と弁明するザッカーバーグ氏を遮り、Facebookは「最高のセックストラフィッキングウェブサイトだ」と非難。ザッカーバーグ氏が「そんなのばかげています」と反論すると、「なぜ削除しないのだ」と声を荒げた。

ワシントンポスト紙によると、STOP CSAM Actは、昨年5月に委員会で超党派の支持を得たが、業界ロビイストや社会市民団体が上院多数党のチャック・シューマー院内総務に拒否するよう働きかけを行なっている。

反対する組織のひとつ、ACLU(アメリカ自由人権協会)は、法案は「意図的、故意に、無謀に」児童性的虐待のマテリアル(child sexual abuse material :CSAM)をホスティング、またはCSAM法に違反して促進したプラットフォームに対して、児童性的搾取の犠牲者が230条を迂回して民事訴訟を提起することを可能にするものだと説明。アプリやウェブサイトが知らずにCSAMをホスティングした場合でも、裁判所が企業に対する責任を認めることができるものであり、たとえ誤った判断であっても不法認定を避けるために、企業が全てのコンテンツを精査することになると指摘。「オンラインで子供たちを守る確実な方法ではなく、すべてのネットユーザーの表現の自由とプライバシーにとっての惨事」と主張している。