エプスタイン 被害女性をワニの餌にすると脅迫

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2019年に拘置所内で死亡したジェフリー・エプスタイン被告から2008年に繰り返して性的暴行を受け、性的人身取引の被害にあったとする女性が、連邦地方裁判所に民事訴訟を提起した。

訴状は3月22日にフロリダ南部地区連邦裁判所に提出された。本名は明かしておらず、被告はエプスタイン遺産財団の遺言執行人2人とされている。

名前を伏せる理由に、イスラム教の家庭出身で、申し立ての性質が自身と家族に多大な不名誉をもたらすほか、広く報じられる可能性などを挙げている。

女性はトルコ出身で、26歳だった2008年1月から5カ月間にわたって被害にあった。訴状には、幼い息子の前でレイプをされたほか、ワニのいる湖に連れ出され、口を割ったら餌食にすると脅されたなど、ショッキングな内容が記されている。

訴状によると、女性は2006年から2007年に不動産ブローカーの仕事をしており、雇用主が開催したバーベキューイベントで、エプスタイン被告とその仲間のギレーヌ・マクスウェル被告に紹介された。雇用主はエプスタイン被告をよく知る人物だったという。

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雇用主からエプスタイン被告が物件を探しているとの話を受け、1カ月の家賃が1万ドル以上の物件を仲介した。手続きにあたり、エプスタイン被告の個人情報を使用せず、現金だけで取引を進めるよう指示されたという。

この頃、マクスウェル被告からエプスタイン被告が女性を雇い入れることに関心があると伝えられたが、興味がなかった。しかし2007年になると高級なギフトを送りつけられるなどして、強く説得されるようになった。さらに同年中頃、マクスウェル被告から「保管」だと告げられ、パスポートを取り上げられた。パスポートは後に、エプスタイン被告がフロリダの自宅にある鍵のかかった箱に保管していたことが判明した。

2008年にマクスウェル被告の説得に押され、エプスタイン被告の元で働くことを検討することに合意すると、まもなく、エプスタイン被告のフロリダの家で散髪と雇用について話す機会が設定された(女性には美容師の経験があった)。

2008年1月中旬に、再びエプスタイン被告の家を訪れた際にレイプされた。家の中に通されると、全裸のエプスタイン被告がおり、マクスウェル被告がレイプを手助けしたという。エプスタイン被告はこの時、女性を脅し、怖がらせるために銃器を見えるところに置いていた。またエプスタイン被告から「報酬」として200ドルを強制的に手渡された。

女性がショックを受けて立ち去ろうと試み、警察に通報する旨を告げると、マクスウェル被告が自分が警察を呼ぶと主張した。まもなく警察官と名乗る2人の人物が到着したが、売春で逮捕すると脅されたという。これらの人物はさらに、息子を連れさり、2人とも強制送還するなどと脅した。

この直後に女性は、エプスタイン被告とマクスウェル被告に車を運転させられ、自身の息子を拾ってネイプルズにあるホテルへと向かった。

この途中、ワニがはびこる湖に停車し、連れ出され、何をされたかを話すのならば、他の少女たちに起きたように、ワニの餌食にすると脅されたという。

その後、ホテルで、数日間にわたって、息子のいる前でレイプされ、性的虐待を受けた。

さらに2008年5月までの間、人身売買され、多くの男性と性的関係を強要された。この中には、ずんぐりとした「ウォルター」と名乗る男や、地方の判事だという年寄りの男がいたという。

エプスタイン被告から、これらの相手に対して17歳だと嘘をつくよう指示されたという。さらに5月初旬に、処女であるとの印象を取引相手に与えるため、膣の手術を強要された。手術は、裕福なロシアなまりの男の個人宅で行われたとしている。

このほかに、エプスタイン被告によって裸やわいせつ行為をする写真やビデオを撮影された。この中には、裸でゴルフをする姿などが含まれている。

2008年4月頃、マクスウェル被告から、エプスタイン被告のものだという鍵付きの箱を家に保管するよう強要された。この際、箱に触れたり、開けたりした場合は殺すと脅されたという。これに加え、司法当局の捜査から隠す目的で、プリペイド携帯や電子機器も渡されたという。

エプスタイン被告は、FBIや移民取り締まり当局、フロリダ州警察とつながりがあるなどといって脅し、黙っていれば、女性の夫にFBIの就職の世話ができるなどと話したという。

女性は、深刻で一生にわたる肉体的、精神的傷害を負い、離婚に苦しみ、性器の切除に苦しみ、親密な肉体関係を享受する身体的および感情的能力を失ったと主張。訴状に10の請求原因を挙げ、陪審による裁判を要求し、補償や損害賠償、没収、法廷が適切とみなす救済措置について判断を求めるとしている。

エプスタイン被告は数十人の少女にマッサージや性行為をさせたとして、フロリダ州で2007年に起訴された。翌年6月、連邦検察と司法取引を行い、連邦レベルの訴追を免れる代わりに、州で2件の買春勧誘罪を認め、性犯罪者として登録することに合意した。18カ月の刑を言い渡されたが、服役中も刑務所を出て自身のオフィスで仕事をすることを許可されていた。

エプスタイン被告は2019年7月に、未成年に対する性的人身取引罪などでニューヨークで起訴されたが、翌月、マンハッタンにある拘留施設内で、自殺をはかり死亡した。

2020年7月、ニューヨーク南部地区連邦検事局はマクスウェル被告の身柄を拘束、起訴した。当初、罪状に性的人身取引を含めていなかったが、先日新たに提出された訴状で、未成年に対する性的人身取引など2件の訴因が追加された。マクスウェル被告は無罪を主張しており、公判は7月12日から開始を予定している。