返却させられたとの話も…ロシア兵の未亡人に毛皮のコートが贈呈

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戦死したロシア兵士の妻に毛皮のコートがプレゼントされ、喜ぶ妻たちの様子を収めた動画がSNSで拡散された。ところが、後になってコートの返却を求められたとの証言が相次いでいる。

動画では、カメラの前に複数の女性が毛皮のコートを持って並んで立ち、1人が代表して「心の底から感謝します。気遣って頂いてありがとうございます。とても光栄です」とロシア語で述べる。それに続き全員でカメラに向かって「ありがとう」と言う。撮影場所はウクライナ東部の新ロシア派地域マキイフカだという。

via Telegram

Newsweekによると、ロシアのニュースチャンネル「CHTDテレグラム」もこの動画をネットで共有し、「一家の稼ぎ手をウクライナで亡くした補償として、未亡人たちに毛皮のコート21着が与えられた」と説明したという。

コートの提供には、ロシアの元諜報員で著名な軍事ブロガーとしても知られるイーゴリ・ギルキン氏の妻、ミロスラバ・レジンスカヤ氏が関与している。自身のSNSに今回の動画を投稿しているほか、動画のクレジットも同氏の名前になっている。今月初めには、ロシアの実業家アレクサンダー・ヴァシリエヴィチ氏が毛皮を寄贈してくれたと、送り主を明かしつつ、ドンバスの未亡人たちに渡す様子を、近く動画でレポートすると投稿していた。なお複数メディアは、動画の撮影者はギルキン氏の盟友、エフゲニー・スクリプニク氏だと伝えている。

ギルキン氏は別名イーゴリ・ストレルコフとしても知られ、諜報員時代は2014年のクリミア併合で要の役割を果たした。同年7月にウクライナ上空で起きたマレーシア航空機MH17撃墜事件の首謀者とされており、昨年オランダの裁判所から終身刑を言い渡されている。今のところ、身柄は拘束されていない。

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撮影後に「コートを返せ」プロパガンダ目的か

反戦を唱えるロシアの団体「フェミニスト・アンチウォー・レジスタンス」はテレグラムの投稿で動画について言及。動画に出ている女性の1人から、撮影後にコートを取り上げられたと訴えがあったと明かした。他に少なくとも3人から同様の訴えが出ている。

団体によると、女性たちは最初、回収の理由をクオリティが悪いので新しいものと交換すると説明されたが、その後、別の人に届けるはずが間違いで渡ってしまったと言われたという。女性は、モスクワから高価なプレゼントを贈るので動画に出てほしいと頼まれたと話しており、こうしたことはロシアではよくあることなのだと付け加えた。

一方で同団体は、動画に出ている女性たちが本当にロシア兵の未亡人かどうかも確かではないと、テレグラムでコメントしている。