ピクサー新作「バズ・ライトイヤー」声優交代は、トランプ氏支持が原因?

6月17日より米国で上映がスタートした「トイ・ストーリー」のスピンオフ映画「バズ・ライトイヤー」(Lightyear)では、バズ役の声役が交代になったことで、さまざまな憶測が飛び交っている。新作では、マーベル映画「キャプテン・アメリカ」のクリス・エヴァンズがバズ役を務めることとなった。

1995年から2019年まで4シリーズ続いた「トイ・ストーリー」では、コメディアンのティム・アレンがバズ役を担ってきた。ファンの一部からは、政治的理由によって「キャンセル」されたのではと勘ぐる声が上がっている。なおアレンは、トランプ氏の支持者で、大統領就任式にも参加していた。

プロデューサーのギャリン・サスマン氏は今月、ハリウッドレポーターのインタビューで、「ティムは、おもちゃのバズを具現化したもので、これはおもちゃの世界の物語ではないため、意味をなさない」と理由を説明。設定が異なるため、同じ役者を起用するのは、観客に「混乱をもたらす」と語った。

一方、女優のパトリシア・ヒートン(Patricia Heaton)は公開直前、ツイッターで、バズ役は「ティム・アレンが始めたもので、彼のもの」だと投稿。ディズニーとピクサーは「大きな過ちを犯した」と批判し、「ティムこそがバズ!なぜこのアイコニックで、愛されているキャラクターを取り除くの?」と疑問を呈した。

イスラム圏からのボイコット相次ぐ

バズ・ライトイヤーは、声優だけでなく、キスシーンを含むLGBTQに関連する場面が含まれることから、イスラム圏で上映禁止が相次いだことでも話題となった。

アラブ首長国連邦は13日、国の「メディアコンテンツ基準に違反する」として上映を禁止すると発表。具体的な理由は明らかにしていないが、ロイターは、中東では多くの国が、同性愛を犯罪と定めていることから、基準に反していると判断したと報じている。

またマレーシア映画検閲委員会は、作品に「LGBTQのライフスタイルを促進する要素が含まれ」、同国の映画検閲に関するガイドラインに違反すると指摘。該当場面を削除するよう求めたが、配給会社が拒否したため、上映の中止を決定したと述べた。Foxニュースによると、同委員会は、LGBTQのシーンに妥協はしないと主張しているという。

このほか、インドネシア、レバノン、ヨルダン、バーレーン、エジプト、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、パレスチナ、シリア、イラクの14カ国で上映が禁止となった。世界最大の映画市場に成長した中国でも、政府がシーンの一部を削除するよう要求したという。しかし、ディズニーが拒否したことから、同国での公開も難しいとみられている。

プロデューサーのギャリン・サスマン氏は、AFPのインタビューに、上映禁止はあらかじめ予想していたと主張。「複数の国の保守的な信念のために」、私たちが作りたいと思っていた内容を変更することはないと語った

アンガス・マクレーン監督も「私たちの映画を製作し、彼らはそれを見たくないといった。それで結構だ」と検閲に屈しない姿勢を示している。

バズ役を演じたクリス・エヴァンスは、ロイター・テレビジョンのインタビューで、同性愛のシーンを批判する人々は「バカだ」と一蹴。「恐れや無知、従来のものに固執する人々は常に存在する。しかしこれらの人々は恐竜のように息絶えていく」と語り、「人間としての成長を受け入れる」ことが重要だと主張した。

なお、テッド・クルーズ上院議員(共和党・テキサス州)は、稼ぎよりも「カルチャーのアジェンダ」を優先したとして、ディズニーの方針を揶揄した

クルーズ氏は、自身のポッドキャストの番組で、ディズニーを「ウォーク」(社会的差別や不公正に対する意識が高いことを揶揄する表現)呼ばわりした上、「ハリウッドは中国市場に進出するため、彼らの批判を避け、反米主義を受け入れ、検閲を許可するなど、中国政府にひれ伏してきた」と説明。「カルチャーのアジェンダに関しては、ふと我に返り”レズビアンのおもちゃの方が重要なので、お金はあきらめよう”と決心した。全く面白い展開だ」と皮肉った。

Varietyによると、問題となったシーンは今年初め、一旦削除されたものの、最終的に復活した。

オープニングは初登場2位

内容よりも政治的話題が先行した「バズ・ライトイヤー」だが、米国では4,255館で公開され、オープニング週の興行収入は予想よりも低い5,100万ドルだった。公開2週目の「ジュラシック・ワールド:ドミニオン」(5,870万ドル)がトップの座を守った。

なおRotten Tomatoesでは、「ショートフィルムで良かったのでは」「ディズニー、マーベル、スターウォーズ・コンプレックスの典型」「アンディがなぜバズのおもちゃを買いたがったのか理解できなかった」など辛辣なメディアの意見が見られるものの、批評家スコアは76%を獲得した。CinemaScoreによると観客の評価はA-となっていることから、口コミでの評判の広がりが期待できそうだ。