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2021年にニューメキシコ州の映画の撮影現場でスタッフが死亡した事件に関し、州検察が、ハリウッド俳優のアレック・ボールドウィンを刑事訴追する方針を固めたことがわかった。

事件があったのは2021年10月。サンタフェで進行していた映画「Rust」の撮影のリハーサル中、ボールドウィン氏が手にした小道具の銃から誤って実弾が発射された。銃弾を受けた撮影監督のハリーナ・ハッチンス氏が死亡し、ジョエル・ソーザ監督が肩を負傷した。

CNBCによると、検察は、銃を用意した武器係の責任者ハンナ・グティエレス・リード氏とともに、それぞれ2種類の非故意故殺罪で起訴する予定だという。

検察は、罪状の一方について、被害者が死亡する原因となった過失を証明しなければならないものだと説明。第4級の重罪にあたるもので、有罪となった場合、最高で18ヶ月の禁固刑と5,000ドルの罰金が科される可能性があるとした。

2番目の非故意故殺罪については、単純な過失以上のものがあったことを証明する必要があり、より厳しい罪だと話した。「銃器強化」とよばれる通常よりも厳しい刑を要求するもので、有罪となれば5年の刑が追加される可能性があるという。

裁判になった場合、陪審員は二人を、どちらかの罪で有罪にするか、または無罪とするか判断することになるという。

現場で銃をボールドウィンに手渡したアシスタント・ディレクターのデイブ・ホールズ氏は、司法取引に応じて過失を認め、6ヶ月の保護観察付執行猶予の判決を受けたという。

事件を担当するアンドレア・リーブ特別検事は声明で、「もしこれら3人のうちの一人でも、自分の仕事を果たしたならば、今日、ハリーナ・ハッチンス氏は生きていただろう。単純なことだ」と述べ、「証拠は、Rustの映画セットでは、安全を軽視する犯罪のパターンがあったことを明らかに示している」と主張した。

なお昨年9月、デイリーメールは、サンタフェ地区検事長のマリー・カーマック・アルトウィズ氏の求めに応じて、州の財務委員会が特別検察官を任命するための費用として31万7,000ドルの予算を認めたと報じていた。

ボールドウィンの主張は?

事件発生時、ボールドウィン氏は映画のセットの教会の椅子に座って、ホルスターから斜めに拳銃を抜く「クロスドローイング」というスタイルで、銃をカメラに向けるシーンのリハーサルをしていた。発砲の際、スタッフらは機材のセッティング中で、カメラは回っていなかったと報じられている。

ボールドウィン氏は事件直後から、アシスタント・ディレクターのホールズ氏がコールドガン(実弾の入っていない銃)だと言って手渡したと主張している。ホールズ氏はこれを認めており、警察の調べに対して、武器係のリード氏が用意したトレーから銃を取り出し、「コールド・ガン」だと伝えて渡したと供述した。肩を撃たれたソーザ監督も、撮影前に「コールド・ガン」という言葉を聞いたと捜査官に証言している。

事件から10ヶ月後の昨年8月、テレビのインタビューに出演したボールドウィン氏は、実弾がセットに持ち込まれたことについて「検討がつかない」「何者かが、実弾を銃に込めた。敷地内にあるはずのない弾丸だ」と話したほか、「誰にも銃を向けたことはないし、彼らに向けて引き金を引いていない」とも主張した。

ボールドウィンが使用していたのは、コルト社製の回転式拳銃「F.lli Pietta single-action revolver」だったが、FBIは事件後の調査で、引き金を引かずに発射される可能性を否定したと伝えられている。

これとは別に、CNNのインタビューでは、ボールドウィン氏はホールズ氏とリード氏を指し、「すべきことをやらなかった人物が2人いる」と非難。「彼らに刑務所に行ってほしいというわけではないが」と前置きしつつ、「2人に責任がある」と明言するなど、自身に責任はないとの立場を示した。

一方で、俳優仲間からボールドウィン氏の非を示唆する声もあがっている。俳優のジョージ・クルーニーは、2021年11月に出演したポッドキャストの番組で、武器係の落ち度との考えを示しつつも、自分は小道具の銃を扱う際の安全手順を守り続けていると説明。「毎回、銃が渡される度に、中を開き、銃を向ける相手に中身を見せ、スタッフに見せる。1テイク撮り終わる度に、武器係に戻す。それを繰り返している」と語った。クルーニー氏はまた、「コールドガン」という言葉は、「聞いたこともない」とも話した。

先述のインタビューで、クルーニー氏の発言を指摘されると、ボールドウィン氏は「毎回銃をチェックするというのが君の手順なら、君にとっては良いことだろう。私も、平均的なキャリアの俳優と同じくらい銃を扱ってきた」と、必ずしも俳優による細かな確認は必要ないとの考えを示している。

なおニューヨークタイムズによると、検察官らは、ボールドウィン氏を起訴するにあたり、現場で銃を安全に取り扱えることを俳優が確認するのは、業界の基準の一部だと判断したと説明した。複数の俳優に話を聞いたとしており、いずれの俳優も手順の重要性を指摘したという。

訴追について、ボールドウィン氏の弁護士、ルーク・ニカス氏は「ボールドウィンは、銃の中、あるいはセットのどこかに、実弾があると信じる理由はなかった。一緒に仕事をした専門家を信頼し、その専門家が銃に実弾はないと断言した」と反論。「ひどい誤審だ」と述べ、「われわれは勝つ」と自信を示している。