ペロシ下院議長「親世代よりも自由ない」米最高裁 中絶の合憲性認める判決覆す

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米連邦最高裁判所は24日、中絶の権利について、憲法上の保護を保証した1973年の「ロー対ウェイド」の判決を覆す判断を示した。

裁判は、ミシシッピ州の妊娠15週目以降の中絶禁止を定めた法律の合憲性をめぐって、同州のクリニックと州保健局トップの間で争われたもので、最高裁は6-3で州法は違憲ではないとの判決を下した。

保守派のサミュエル・アリート判事は多数派の意見書で「ローは最初からひどく間違っていた。根拠が非常に弱く、判決は危害をもたらした」と「ロー対ウェイド」判決に反対表明。後に中絶の権利の大部分を維持した1992年の「プランド・ペアレントフッド対ケイシー」事件は「断絶を深め」たと述べ、「憲法に従って、中絶の問題を人々に選ばれた代表者に戻す時だ」と、州の判断に委ねられるべきとした。

意見書にはトーマス判事、ゴーサッチ判事、カバノー判事、バレット判事が名を連ねた。保守穏健派とされるロバーツ長官は、判決で多数派に回ったものの、別に意見書を記し、「ロー対ウェイド」および「プランド・ペアレントフッド対ケイシー」の判決を覆す決定は、「法システムに深刻な動揺」をもたらすと指摘しつつ、当該事件の判決を下すのに必要ではないとの見解を示した。

ナンシー・ペロシ下院議長(民主党・カリフォルニア州)は会見で、「共和党に支配された最高裁は本日、リプロダクティブ・ヘルスの決定に関する女性の権利を奪い去るという、共和党の急進的で悪しき目標を達成した」と非難。

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トランプ前大統領や共和党上院トップのミッチ・マコーネル院内総務らを名指しした上で、これらの人物のせいで、「今日の女性は、母親の世代よりも自由がなくなった」と述べた。

最高裁が前日、銃を外で持ち歩くことを制限するニューヨーク州の法律を違憲と判断したことに触れ、州が憲法で保証された権利を制限することはできないと判断する一方で、「今日は、50年間憲法で保障されてきた選択の権利を、州が覆すことができると判断した」と指摘。「なんという矛盾」と非難した。

「偽善的であることはこの上ないが、危害も甚大だ。女性がリプロダクティブの自由に関して、自ら判断を下させないのは、侮辱だ」と語った。

ペロシ氏は、共和党の目標は、ロー対ウェイドの判決を覆すだけでなく、「全米で中絶を禁止しようと企んでいる」と主張した。

11月の中間選挙は、女性の選択の権利や、リブロダクティブの自由を問うものになるとし、これらを「犯罪化」するのを阻止しなければならないと語った。

民主党のチャック・シューマー上院院内総務は声明で「国家の歴史において最悪の日」と述べ、判事は「アメリカ人女性から中絶の基本的な権利を奪い去った」と批判した。

一方、マコーネル氏は「勇敢で正しい」と最高裁の判断を支持。「憲法と社会的弱者の歴史的な勝利だ」と述べた。人種分離を合憲とした「プレッシー対ファーガソン」の判決を覆した「ブラウン対教育委員会」の裁判を引き合いに、最高裁は、法的かつ道徳的なひどい誤りを修正したと話した。