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連邦最高裁判所が女性の人工妊娠中絶の権利を認めた1970年代の判断を覆したことで、共和党関係者からは、歓迎する一方で、世論調査や前例から有利とみられている11月の中間選挙への影響を懸念する声が上がっている。

最高裁はこれまで、妊娠中絶を憲法で保護された権利とした1973年の「ロー対ウェイド判決」の判例に倣ってきたが、今回その判断を覆したことで、各州が独自に中絶禁止法を定めることを容認した形。判決を支持した保守派のアリート判事は、意見書で「われわれの判断は、中絶の問題を立法機関に返すもので、この問題に関してそれぞれ側の女性が、世論に働きかけ、議員にロビー活動をし、投票し、公職に立候補することを通じて、立法のプロセスに影響を与えようとすることを可能にする」と述べた。

判決後、すでに11州が中絶を違法もしくは厳しく制限したと伝えられている

共和党の全国の下院選挙にストラテジストとして関わっているというジョン・トーマス氏は政治サイトPoliticoの取材に、中絶問題は避けたい話題と説明。「経済に関する議論がしたい。ジョー・バイデンについてや、ロー以外のことならほぼすべてについて話題にしたい。共和党にとっては勝ち目のない問題だ」と、選挙の中心議題になることに警戒を示した。

元下院議員の女性は、匿名で同サイトの取材に答え「民主党ができることは”ロー”のことだけ」としつつ、最高裁の判決は「社会的驚愕を起こす」と世論に与える影響を強調。「これで投票率が上がるかといえば、答えはイエスだ」と述べ、「45議席失うところを30議席で済むかも知れない」と見通しを語った。

現在民主党が下院で有する議席数は、過半数(218)をわずかに上回る220議席、共和党は210議席を保持している。

在任中に3人の最高裁判事を送り込み、今回の判決に最も貢献したともいえるトランプ前大統領も、共和党にとってマイナスになることを危惧していたという。

ニューヨークタイムズによると、トランプ氏は周囲に「共和党にとって悪い」と繰り返し話していたほか、バイデン氏勝利に貢献した「郊外の女性」を怒らせ、11月の選挙で共和党の反発につながるだろうと話していたという。

選挙の行方を左右する無党派層の意思決定にも一定の影響があるとみられる。

先述のアリート判事による意見書がリークされた後に実施されたギャロップによる世論調査によると、国民の過半数(58%)が「ロー対ウェイド判決」を覆すべきでないと回答した。支持政党別では、民主党80%に対して、共和党では31%。無党派層では62%が判決維持を唱えていた。

判決当日から全国各地で激しい抗議活動の様子が伝えられているが、民主党にとってどこまでの追い風になるか不明な部分もある。

バイデン氏の支持率が過去最低の39%を記録した5月のNBCによる世論調査では、資料リーク直後だった人口妊娠中絶は、重要な課題として前回の9位から4位に浮上したものの、トップは引き続き「生活コスト」「雇用と経済」だった。ガソリン価格高騰やインフレ対策を巡る政権への不満は依然として高い。

最高裁の判決を受け、バイデン氏は、中絶の権利保護を回復するために「女性の選択する権利を今一度連邦法に成文化する多くの上院議員と下院議員を選出して、地方レベルでもより多くの州の指導者を選出しなければならない」と主張。「ローが投票にかけられる。個人の自由が投票にかけられる。プライバシーと自由、平等の権利、すべてが票にかけられる」と訴えかけた。