トランプ氏 選挙後見据えた「復讐」計画か

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政権復帰を狙うトランプ前大統領と側近らは、当選を見据えて、批判に回った者や政敵に復讐する計画を水面下で進めているという。

ワシントンポスト紙によると、トランプ氏はここ最近、側近や友人とのプライベートの会話で、かつての政権当局者で後に批判的になった人物らについて、司法省による捜査を望んでいると明かしていた。これには政権で最初の大統領主席補佐官を務めたジョン・ケリー氏やウィリアム・バー元司法長官、モラー特別検察官のロシア捜査でホワイトハウスのリーガルチームに加わった弁護士のタイ・コブ氏、ミリー統合参謀本部議長らが含まれていた。さらに、司法省または連邦捜査局の職員を訴追する可能性にも言及したという。

一部の計画は、ワシントンD.Cの右派のシンクタンクが非公式に請け負い、「プロジェクト2025」の名で検討が進められている。同紙が入手した計画に関する会話や関係者の話によると、就任式当日に暴動が起きる場合に備え、「Insurrection Act(反乱法)」に基づいて軍を配備するといった案も議論されているという。

またトランプ氏の司法省に対する指揮能力を拡大するため、ウォーターゲート事件以来50年に渡って続く、訴追を政治的考慮から保護することを目的とした政策や慣行を廃止する計画も練られているという。

トランプ氏は公の場でこうした動きを正当化するともみられる発言をしている。先月ニューハンプシャー州で行った演説では「政敵を逮捕するのは第三世界の国の話だ」と批判しつつ、「つまり、私にもそれができるということだ」と語っていた。

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共和党予備選の世論調査でトップを独走するトランプ氏は、現在直面している複数の刑事訴追について、自分を貶めるための「政治的訴追」と繰り返し主張している。

ワシントンポスト紙は、トランプ氏の選挙キャンペーンの中心テーマは「報復」であり、個人の法的問題に「右派アメリカ人が感じている軽蔑や攻撃への報復の呼びかけ」を織り交ぜようと試みていると指摘している。

復讐リストに名前の上がったケリー元大統領主席補佐官は、ポスト紙の取材で、2018年に明るみに出た第一次世界大戦の戦没兵に対する「マヌケ」発言疑惑をめぐり自身が捜査対象にされることを予想していたと答えたという。

タイ・コブ氏は「トランプ自身が、容疑者リストの誰よりも刑務所で朽ち果てる可能性が高い」と動じない姿勢を示した。

トランプ氏に対する罪状は合計で91件にのぼり、すべてにおいて有罪となれば理論上は最大で刑期700年を超える。

司法長官候補は?

司法長官に誰を据えることを想定しているのかは明らかでないが、先述の「プロジェクト2025」の反乱法に関する計画は、司法省の中位の職員だったジェフリー・クラーク氏が率いているという。

クラーク氏は、選挙後にトランプ氏の見解に好意的であったことから、トランプ氏が司法長官代理に据えることを検討したこともあった。ジョージア州でトランプ氏とともに起訴されており、選挙結果に影響を与えるために「司法省が”重大な懸念を特定した”」と虚偽の内容を記した書簡を州当局者宛に送ろうとしていたことなどが発覚している。

連邦レベルでジャック・スミス特別検察官が進める選挙介入に関するトランプ氏の訴追では、名前が明らかにされていない共犯者の1人とも見られている。起訴状には、共犯者の1人が、トランプ氏が退陣を拒否すれば「すべての主要都市」で暴動に発展するとのホワイトハウスの警告に対して、「それが反乱法がある理由だ」と答えたと記されている。