ホワイトハウス防衛に使用の防空兵器 米政府がウクライナ支援で調達契約

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米国防総省は30日、ウクライナの軍事支援の一環で、地対空ミサイルシステム「NASAMS」の調達に関して、米防衛大手レイセオン社と総額12億ドル(約1600億円)の契約を締結したことを明らかにした。

国防総省は今年8月、追加6基の契約手続きを開始すると発表していた。財源はウクライナ安全保障支援イニシアティブ基金をあて、今回の発注に基づく作業は、2025年11月28日までに完了するとしている。

ウクライナにはすでに2基が供与されている。オースティン国防長官は先月16日の会見で、「NASAMS」が現地で運用を開始したと明らかにするとともに、ミサイルの迎撃に100%成功していると効果を強調した。

この前日、ロシアは侵攻開始以来最大とされる100発近くのミサイル攻撃を実施。ウクライナ全域の都市やエネルギー施設が標的とされ、国内のエネルギーシステムのほぼ半数が被害を受けたと報告された。

NASAMS(Norwegian Advanced Surface-to-Air Missile System)は、航空機やヘリコプター、巡航ミサイル、ドローンに対抗するようデザインされた中距離防空用の高度地対空ミサイルシステム。高価なアセットや人口密集地にも配備され、米国ではホワイトハウスと議会建物の防衛に使われている。米国のほか、フィンランド、オランダ、スペイン、オマーン、チリを含む世界12ヵ国で使用されている。

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ロシア軍は、地上戦で苦戦する一方、都市や民間のインフラ設備を狙った爆撃を繰り返しており、米国や支援国は、ウクライナの防空強化を最優先事項と位置付けている。

国防総省高官は先月29日の会見で、ロシアは「冬が近づく中、ウクライナ国民を罰しようという恐ろしい攻撃」に転じていると非難。「ウクライナだけでなく、広い地域に危害をもたらす核事故の危険性を増そうという意思を示したものだ」とも主張した。

イランによる兵器提供の問題に触れつつ、ロシアが攻撃を緩める気配はないとした上で、ウクライナの防空能力は「米国とパートナーにとって、緊急の優先事項だ」と説明した。

なお米国は先月、防空強化に向けて、NASAMSのほかにホークミサイル、アベンジャー防空システムを新たに供与する計画を明らかにした。サブリナ・シン副報道官は、供与に際し、他国が供与する兵器も含めて「異なるレンジの防空システムの網を構築している」と説明した。