ウクライナの若者を戦場に送るのやめるべき、イーロン・マスク、ゼレンスキー大統領に呼びかけ

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イーロン・マスク氏は、ポッドキャスト番組のインタビューで、ウクライナのゼレンスキー大統領に対して、若者を前線に送って死に追いやるべきではないと呼びかけた。

昨年示した独自の和平案が物議を醸したマスク氏は、ロシア系アメリカ人のコンピューター科学者でポッドキャスターのレックス・フリードマン氏の番組で、ウクライナ・ロシア戦の前線で、第一次世界大戦と同様の塹壕戦が繰り返されていると指摘。航空機よりはるかに優れた地対空ミサイルにより、両陣営ともに航空優勢を得られず、戦車は「基本的に死の罠」だとした上で、「死の可能性が信じられないほど高く、双方が前進しようと思えない」状況にあると語った。

マスク氏は昨年、ロシアが編入を宣言したウクライナ東・南部4州について、国連の監督下で住民投票を再び実施することや、クリミアをロシアの一部と認めるといった独自の和平プランを提案し、ウクライナ側から強い非難を受けていた。

こうした和平を提案したのは、「基本的に領土がほとんど変わらないのに人々が大勢死ぬという、何が起きるかをほぼ正確に予想していたからだ」と主張。「彼がプーチンと交渉するかどうかはともかく、ウクライナの若者たちを塹壕で死ぬために送らないように勧める。やめるべきだ」と述べ、「誰が攻勢に出ようとも、膨大な数の人々を失うことになる。歴史はそれを認めないだろう」と語った。

また、ロシアの若者にも同情するべきだと述べ、「若者たちは互いを知らず、互いを知っている老人のために殺し合っている」と加えた。

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ウクライナ軍のワレリー・ザルジニー総司令官はエコノミストの1日掲載のインタビューで、数ヶ月におよぶ激しい戦闘に関わらず、前線はほとんど動かず、ウクライナ軍とロシア軍が「膠着状態」に陥っているとの評価を示した。

「第一次世界大戦と同様に、我々は膠着状態に陥る技術レベルに達している」と述べ、 「おそらく深くて美しい突破口は存在しないだろう」と語った。状況の打開には大規模な技術的飛躍が必要との見解を示した。

一方、ゼレンスキー大統領は4日の欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長との会見で、「時間が経ち人々は疲れている。…しかし、これは膠着状態ではない」とザルジニー氏の見解を否定。「われわれのパートナーの中で、ロシアと話し合い、ロシアに何かを与えるよう圧力をかけている者はいない」と語った。この前日、米国および西側当局者とウクライナ政府は、ロシアとの和平交渉に向けた話し合いを水面下で進めているとの報道が流れていた。

なおニューヨークタイムズによると、米当局者らは「膠着状態」の言葉の使用を慎重に避けているものの、バイデン氏の側近の多くは、戦闘が膠着し、前線を動かすことができないとの見方に同意を示しているという。また、ゼレンスキー氏が要求したすべての兵器を提供しているとも述べており、9月に供与したことが明らかになった長距離ミサイルATACMSについては、ロシアがすでに対応を学び、戦況に影響を与えることができないのではないかと懸念を示したという。

ウクライナはロシアが侵攻を開始した直後からATACMSの供与を求めていたが、米露の直接的な紛争に発展することを恐れるバイデン大統領は「ロシアを攻撃できるロケットシステムをウクライナに送るつもりはない」と話すなど、供与を否定していた。ロシア側も長距離ミサイルの提供は「レッドライン」であり、提供するならば、米国が「紛争当時国」であることを示すものだと警告していた。