クオモNY州知事 トランプ政権のワクチン配布計画巡って提訴の構え

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ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は15日、マンハッタンのアッパーサイドにあるリバーサイド教会で行ったスピーチで、トランプ政権による新型コロナウイルスのワクチン配布計画は「平等保護条項」に違反すると主張。計画が変更されない場合、政権を提訴すると述べた。

クオモ氏は、政権の計画は「基本的に民間の医療事業者がワクチンを実施するもの」とした上で、「黒人とヒスパニック、貧しいコミュニティでは、医療機関が少ないことがわかっている。何度も医療砂漠となっている」と述べ、ニューヨーク州は「医療サービスが十分でない黒人とヒスパニック、貧しいコミュニティに、ワクチンが行き渡るよう特別な措置を講じなければならない。民間市場だけではできない」と語った。

続けて、これらのコミュニティに公平にワクチンを実施するには、信仰に基づくグループなど、コミュニティグループの協力を得なければならないと説明。また「公営住宅プロジェクトや低所得地域に出向く医療チームやアウトリーチチームが必要だ」と州独自の対策の必要性を強調した。

一方、州の財政は150億ドルの赤字を抱えており、公平なワクチンの配分には「連邦政府の予算が必要だ」と主張。「政府の疾病対策センターは、公平な配布プログラムには66億ドルがかかると試算しているが、彼らはたったの1億4,000万ドルしか提供していない。リソースを与えないでおきながら、州の責任などといわないでほしい」と政権の対応を批判した。

さらに「有色人種のコミュニティに負担を負わせて、ワクチンへのアクセスを妨害する計画」は憲法の「平等保護」をコミュニティから奪うものだと主張。「トランプ政権がこの計画を変更せず、公平なワクチンプロセスを提供しないのならば、われわれは法的権利を行使して、ニューヨーカーを守るために提訴する」と語った。

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クオモ氏は演説中、新型コロナウイルスは政府への信頼のなさを示したと主張。「米国民の50%は、今日手に入ったとしても接種しないと言っている。連邦政府が、(ワクチン開発の)プロセスを政治利用したやり方が信用できないからだ」と述べ、ワクチンの安全性を理解させるために、政府の承認と「同時」に独立した医療専門家と審査を行うと述べ、これまでの計画を変更しない姿勢を示した。クオモ氏によると、ニューヨークを含む7州が、州独自の承認プロセスを計画している。

また「不法移民は連邦政府を信頼しておらず、ワクチンのプロセスを、国外追放するために彼らを特定することに利用するかもしれないと考えている」と述べ、「われわれは、政府の信頼を回復しなければならない。人々が接種するために十分に政府を信頼をしてはじめて、ワクチンは機能するのだ」と語った。

トランプ氏 ニューヨークへのワクチン配布は後回し

トランプ大統領は先日、ワクチン配布の見通しを発表した際、クオモ氏の承認計画に不快感を示し「政治的理由で、時間が必要だと主張する州知事のいるニューヨークのような地域は例外」と、ニューヨーク州を後回しにする意向を示した。

またツイッターでも「時間を無駄にできない。すぐにワクチンを使用する州にのみに与える。よってニューヨークは遅れることになる」と投稿した。

これに対し、クオモ知事は「進行中の問題があるからだ」と述べ、「大統領はニューヨークの選挙で大差で負けている。大統領を脱税の容疑で捜査しているニューヨークの検察官がいる」と、私的な報復に政府を利用しているとの考えを示唆した。