エミー賞受賞ドラマ『メディア王 〜華麗なる一族〜』の実在のモデル

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メディア界を牛耳るロイ家のドロドロとした後継者争いを描いたドラマ『メディア王 〜華麗なる一族〜』(Succession)。現地時間15日に開催されたエミー賞では、今年最多の27部門にノミネートされた。

主演男優賞では、エミー賞史上初めて3人の主役(ジェレミー・ストロング、キーラン・カルキン、ブライアン・コックス)がノミネートされ、俳優陣の受賞の行方にも注目が集まっている。

ローガンのモデルは

メディア帝国「ウェイスター・ロイコ」を築き上げたローガン・ロイのキャラクターについて、脚本家のジェシー・アームストロング氏は自身の著書で、FOXコーポレーションとニューズ・コーポレーションの名誉会長ルパート・マードック氏(92)と、CBSとViacomを所有する米メディア王の故サムナー・レッドストーン氏、英メディア王の故ロバート・マクスウェル氏が「三位一体となったモデル」と説明している。

3人の共通点について「死について考えることを拒否していた」と説明。また「支配への欲求、取引に対する熱狂的なエネルギー、ゴシップと権力への愛、雇用と解雇へのある種の無慈悲さに加え、何よりも、前に押し進む本能があるが、内省が極度に欠如している」と特徴を挙げた。

メディア王に関する企画は2011年ごろから存在しており、当初はマードック氏のビジネスの秘密を探るドキュメンタリーの制作を計画していたという。ドラマに登場する4人の兄弟(コナー、ケンダル、シブ、ローマン)も、彼ら3人の子供たちからインスピレーションを得たと語っている。

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なお、マクスウェル氏は1991年にヨットから転落し不可解な死を遂げた。レッドストーン氏は2020年8月に97歳で死去したことから、実際のエピソードは、マードック氏のお家騒動に着想を得た可能性が高い。

アームストロング氏は作品の「中核」は、英国のEU離脱を率い、トランプ大統領誕生をお膳立てしたメディアのあり方に「行き着く」と説明。ザ・サンやFOXニュースが英国や米国を回しているわけではないと述べつつも、「一企業の一人の男性が、社会に特別な影響を与えていると思わずにはいられない」と語っている。

なおマードック氏は2022年、4番目の妻ジェリー・ホール氏と離婚したが、調停では、ドラマの脚本家にネタを提供することを禁じる項目が盛り込まれていたと報じられている。

ニューズ・コープの後継者争いは?

マードック氏には、3人の前妻の間に6人の子供がいる。2023年9月、FOXコープとニューズ・コープの会長の座を退く計画を発表し、第三子で長男のラクラン氏を後継者に任命した。

ラクラン氏はプリンストン大学卒業後、父親の元で働いた。1997年にニューズ・コープの副最高執行責任者を務めた後に独立。オーストラリアに移住し、自身で会社を起業したが、2014年にニューズ・コープと21世紀フォックスの非常勤共同会長として、一族に戻った。

長男の事業復帰に関して関係者は、後継者を自負していた4番目の子供で次男のジェームズ氏にとって「大きな屈辱」だったとVanity Fairに語っている。

そのジェームズ氏はハーバード大学を中退後、ヒップホップレーベル「Rawkus Records」を立ち上げた。エミネムやモス・デフなどが所属する人気レーベルだったが、1998年にニューズ・コープに買収された後、同社の副最高執行責任や21世紀フォックスのCEOを歴任。約20年間、一族の事業を支えてきた。2019年に21世紀フォックスがディズニーに売却された後、ニューズ・コープを去った。

ジェームズ氏は、ケンダルとローマンのキャラクターをミックスしたような経歴だが、Foxニュースの関係者は「彼はルパート氏が死去した後、姉妹と共にFoxニュースを崩壊させるつもりだ」と語ったという。

ドラマの後継者争いは、ファイナル・シーズンで驚くべき結末を迎えるが、リアル社会のメディア帝国の行方からも目が離せない。

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