音楽配信大手スポティファイ・テクノロジーは、メーガン妃のコンテンツ契約を手がけるなど、ポッドキャスト事業を主導した幹部が退社することを明らかにした。

スポティファイのダニエル・エクCEO(39)は23日、「組織改変に関する最新情報」と題した声明で、全従業員の約6%を削減する計画を示すと共に、コンテンツ・広告部門のトップ、ドーン・オストロフ氏が「スポティファイを離れる決断をした」と発表した。大規模な人員削減の背景について、2022年の事業経費の増加が収益の伸びを2倍上回ったとしつつ、現状のコスト削減努力では不十分と説明した。「収益の成長に先行して、投資に野心的になり過ぎていた」とも述べた。

英紙テレグラフによると、オストロフ氏はポッドキャスト事業への投資の原動力となった人物で、メーガン妃のポッドキャストコンテンツ「Archetypes」の配信権を得るにあたり、ヘンリー王子夫妻が手掛ける音声配信事業「アーキウェル・オーディオ」と2500万ドル(約33億円)の契約を交わしたとされる。人気コメディアン、ジョー・ローガン氏のポッドキャスト「ジョー・ローガン・エクスぺリエンス」の契約でも責任者を務め、配信権獲得に2億ドル(約260億円)を費やしたと言われている。このほか製作会社「ギムレット」の買収なども手掛け、オストロフ氏の元で独占契約や買収に費やされた総額は約10億ドル(約1300億円)にのぼるという。

しかし最近では損失が目立つようになり、事業戦略に対するコストの高さに投資家の間で警戒感が広がっていた。先月ネットフリックスで配信が始まった『ハリー&メーガン』は歴代2位の視聴数を叩き出す成功を収めた一方、同じメーガン妃が手掛けるスポティファイの「Archetypes」は同等のインパクトは与えられなかった。昨年夏の配信開始時こそ1位を獲得したものの、その後はマライア・キャリーやセリーナ・ウィリアムズのコンテンツに押され、11月には22位に落ち込んでいる。

ジョー・ローガン氏との契約も裏目に出た。反ワクチン主義を自称するローガン氏が、コンテンツ内で新型コロナワクチンに関する誤情報を広めたとして、ニール・ヤングをはじめ大物アーティストが続々とスポティファイから自身の楽曲を取り下げた。さらに、エピソードの一つで人種差別的発言があったことも発覚し、配信中止を余儀なくされた。ローガン氏はこの件について謝罪している。

投資家らの圧力でスポティファイはポッドキャスト事業のコスト削減に動き始め、昨年10月からすでに制作部門でのレイオフをはじめていた。オストロフ氏が担ったコンテンツ・広告トップの役職は今後、最高事業責任者(CBO)が引き継ぎ、エクCEOは方針転換によって「効率化、コストの抑制、迅速な決断」を実現するとしている。

オーディオアナリストのマット・ディーガンは、スポティファイが「勝算のある範囲を超えて」ポッドキャスト事業やセレブとの独占契約に投資したと分析。「巨額の契約料を見直し、必要性を再検討しても驚きはない」とコメントした。スポティファイは退職金など人員削減に伴う費用を56~73億円程度と見積もっている。23日の同社株価は8%上昇した。

IT業界ではパンデミックで収益が伸びたことに伴い雇用を加速させたが、その反動で昨年から今年にかけて業績が悪化し、大規模レイオフに踏み切る企業が相次いでいる。先週にはグーグルが1万2000人、マイクロソフトが1万人の人員削減計画をそれぞれ発表したばかり。

メーガン妃とヘンリー王子 今後の作品の方向性は?

夫妻とスポティファイの契約は、ネットフリックスと同様に複数年におよぶと報じられている。先日発売された王子の回顧録「Spare」の発売元、ペンギンランダムハウスとの契約も、一部では、複数の書籍におよぶと伝えられている。

今年夏にネットフリックスでスポーツ関連のドキュメンタリー「Heart of Invictus」の配信が予定されているものの、その後の主要なプロジェクトは明らかにされておらず、今後の作品の方向性が注目される。

これまでの傾向について、王室に関する企画が、夫妻の理念や信条に焦点を当てた内容に比べ圧倒的な視聴を獲得しているとの指摘もある。

兄ウィリアム皇太子から暴力を受けたことや、10代での薬物使用、歳上女性との初体験、アフガニスタンで25人の敵を殺害したエピソードなど、発売前からセンセーショナルな内容が報じられた「Spare」は、初週の販売部数が世界で320万部を超え、同種類の書物として史上最高記録に到達する可能性がささやかれている。ネットフリックスのドキュメンタリーとして、歴代2位の成功を収めた『ハリー&メーガン』では、二人の出会いや王室離脱の経緯を、資料映像や、本人および関係者らの証言とともに振り返りつつ、タブロイド紙や王室の体質、王室の二人の扱いに対する批判的な主張が展開された。

スポティファイの「Archetypes」では、初期のエピソードはトップを獲得したものの、女王の死後、王室の暴露を控えるようになった後半のエピソードが、再び上位に返り咲くことはなかった。

メーガン妃が、ヘンリー王子と息子の関係にインスピレーションを得て製作したという絵本「ベンチ」は、2021年6月の発売初週の売り上げはわずかに1万6,000部だったと伝えられている。

ただし王室に触れる企画が、今後とも成功し続けるか定かではない。Varietyのアナリストは先月、回顧録の発売を前に、王室による不当な扱いに関する話がいつまでも続かないといった懸念はもっともであり、メディアは疑念を持つべきだと警告した。

王室批判が夫妻の名声を損ねる可能性もある。ニューズウィークが回顧録発売後に米国で実施した世論調査では、ヘンリー王子とメーガン妃の人気は前月から急落。「好ましくない」と答えた回答者が「好ましい」を上回り、それぞれ-7、ー13ポイントとなった。英国の最近の調査でも、二人の人気は、未成年に対する性的暴行疑惑が取り沙汰され公務引退に追いやられたアンドルー王子に次ぐ、ワースト2位と3位となった。

先日の英紙テレグラフのインタビューで、回顧録に掲載しきれなかった重要なエピソードがあるとするなど、王室に関するさらなる暴露の可能性を示唆しているヘンリー王子だが、メーガン妃とともに今後、商業的成功と名声のバランスをいかにとるか、難しい決断を迫られるのかもしれない。