明日開催 第91回アカデミー賞 米紙が選ぶオスカー予想は?

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24日、ロザンセルスのドルビーシアターで第91回アカデミー賞の授賞式が開催される。視聴率の低迷に悩むされている映画芸術科学アカデミーは「人気賞」新設(多くの非難を受け幻に終わった)や、司会者ケヴィン・ハートの降板、時間短縮のため一部の賞の放送をカットするなど、開催前から迷走ぶりが話題となった。

今年は、ネットフリックス(Netflix)作品『ROMA/ローマ』や、マーベルのスーパーヒーロー『ブラックパンサー』が初めて作品賞にノミネートされた。日本からは是枝監督の『万引き家族』や細田守監督の『未来のミライ』がノミネーションされるなど注目作品も多い。
米メディアの予測する主要5部門のオスカー予想は?

作品賞

『ブラックパンサー』(Black Panther)
『ブラック・クランズマン』(BlacKkKlansma)
『ボヘミアン・ラプソディ』(Bohemian Rhapsody)
『女王陛下のお気に入り』(The Favorite)
『グリーン・ブック』(Green Book)
『ROMA/ローマ』(Roma)
『アリー/ スター誕生』(A Star Is Born)
『バイス』(Vice)

ローマ
©Carlos Somonte

前哨戦となる賞では、『ローマ』と『グリーン・ブック』(Green Book)が多数の賞を獲得している。
『ローマ』は、アルフォンソ・キュアロン(Alfonso Cuarón)監督が70年代のメキシコを舞台に、家政婦とその家族の絆を描いた白黒の自叙伝的ドラマ。これまでに、全米監督協会賞(DGA)、英国アカデミー賞(BAFTA)、放送映画批評家協会(BFCA)を受賞。

『グリーンブック』は、実在の黒人ピアニスト、ドン・シャーリーと、用心棒として雇われた白人トニー・リップの友情を描いたロードムービー。これまでに、全米製作者組合賞(PGA) 、ゴールデングローブ賞コメディ部門(Golden Globes)を受賞している。

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ニューヨークタイムズ(NYT)やニューヨーカー、ニューヨークマガジン、タイム、ハリウッドレポーター、バラエティなどほぼ全てのメディアが、作品賞に『ローマ』の受賞を予想。
オスカーでは人種差別をテーマにした作品が好まれる傾向にあるが、米国で『グリーンブック』は、ストーリーが陳腐だとして批評家の評判は芳しくない。物語の真偽が問われたり、脚本家や人種差別的な発言や、監督のセクハラ行為が問題視されたりと、議論も多い。

NYマガジンは、スパイク・リー監督の『ブラック・クランズマン』(BlacKkKlansman)サプライズ受賞する可能性を上げた。

その他の作品に関しては『ブラックパンサー』が全米映画俳優組合賞(SAG)を、『ボヘミアン・ラプソディ』が、ゴールデングローブ賞・ドラマ部門、『女王陛下のお気に入り』全米映画編集者賞(ACE)を受賞していることから、これらの作品にも注目が集まっている。

主演男優賞

クリスチャン・ベール (Christian Bale)『バイス』
ブラッドリー・クーパー(Bradley Cooper) 『アリー/ スター誕生』
ウィレム・デフォー (Willem Dafoe) 『永遠の門 ゴッホの見た未来』(At Eternity’s Gate)
ラミ・マレック(Rami Malek) 『ボヘミアン・ラプソディ』
ヴィゴ・モーテンセン(Viggo Mortensen)『グリーン・ブック』

©HFPA Photographer

『ボヘミアン・ラプソディ』でフレディ・マーキュリーを演じたラミ・マレックはゴールデングローブ、SAG、BAFTAで主演男優賞を獲得している。
バラエティは、過去16年間で伝記作品を演じた俳優が11回受賞していることから、ラミ・マレックと、ディック・チェイニー元副大統領の伝記映画『バイス』のクリスチャン・ベールが受賞する可能性があるが、「キュアロン監督同様、このカテゴリーではラミ・マレックが受賞するだろう」と述べる。NYT、タイム、NYマガジンなどもラミ・マレックを予想。
20世紀FOXの『ボヘミアン』はブライアン・シンガー監督の降板など製作上のトラブルのほか、米国の批評家による評価は高くなかった。しかしファンが待ち望んだクイーンの伝記ドラマと、マレックの好演により全米初登場1位を記録。日本を含む世界中で大ヒットした。

ラミ・マレック(37)は初のノミネートで、オスカー獲得の場合、近年における最も若い受賞者となる。

ニューヨーカーは、『アリー』のブラッドリー・クーパーを上げた。クーパーは初監督を務めたことから「高予算セルフィー賞」(がもしあれば)それに該当すると述べる。

主演女優賞

ヤリッツァ・アパリシオ(Yalitza Aparicio)『ROMA/ローマ』
グレン・クローズ (Glenn Close)『天才作家の妻 40年目の真実』
オリヴィア・コールマン(Olivia Colman) 『女王陛下のお気に入り』
レディー・ガガ(Lady Gaga) 『アリー/ スター誕生』
メリッサ・マッカーシー(Melissa McCarthy) 『ある女流作家の罪と罰』

DFree / Shutterstock.com

主演女優賞はオリヴィア・コールマンとグレン・クローズ の一騎打ちが予想されるが、ほぼ全てのメディアがグレン・クローズの受賞を予想。グレン・クローズは今回を含めると、今までに7回ノミネーションされている。

助演男優賞

マハーシャラ・アリ(Mahershala Ali)『グリーンブック』
アダム・ドライバー(Adam Driver)『ブラック・クランズマン』
サム・エリオット(Sam Elliott) 『アリー/ スター誕生』
リチャード・E・グラント(Richard E. Grant) 『ある女流作家の罪と罰
サム・ロックウェル(Sam Rockwell)『バイス』

Mahershala Ali
©Universal Studios

NYTやタイムは『グリーン・ブック』で、実在のピアニストを演じたマハーシャラ・アリを予想。アリが受賞の場合は、3年間で2度目のオスカー獲得となる。前回は『ムーンライト』(Moonlight)で同賞を獲得した。

ニューヨーカーは『ある女流作家の罪と罰』(Can You Ever Forgive Me)のチャード・E・グラント(Richard E. Grant)を予想している。

助演女優賞

エイミー・アダムス(Amy Adams)『バイス』
マリーナ・デ・セルヴィッツェ(Marina de Tavira)『ROMA/ローマ』
レジーナ・キング(Regina King)『ビール・ストリートの恋人たち』
エマ・ストーン(Emma Stone)『女王陛下のお気に入り』
レイチェル・ワイズ(Rachel Weisz) 『女王陛下のお気に入り』

DFree / Shutterstock.com

助演女優賞は、今回最も票の分かれるカテゴリーとみなされている。NYT、タイム、バラエティなど多くのメディアはレジーナ・キング(Regina King)の受賞を予想。
ハリウッドレポーターは、レジーナ・キングは、アカデミー会員の多いSAGやBAFTAではノミネートされなかったとして、『バイス』でチェイニーの妻役を演じたエイミー・アダムスを予想。アダムスは、これまでに6度ノミネートされている。
NYマガジンは、レイチェル・ワイズの名をあげた。

監督賞

スパイク・リー (Spike Lee)『ブラック・クランズマン』
パヴェウ・パヴリコフスキ(Paweł Pawlikowski) 『あの歌、2つの心』
ヨルゴス・ランティモス(Yorgos Lanthimos)『女王陛下のお気に入り』アルフォンソ・キュアロン(Alfonso Cuarón)『ROMA/ローマ』
アダム・マッケイ(Adam McKay)『バイス』

Matteo Chinellato / Shutterstock.com

多くのメディアは、アルフォンソ・キュアロン監督の受賞を予想。『ローマ』は、これまでにゴールデングローブ、BFCA、DGA、BAFTAで監督賞を獲得している。キュアロン監督は、5年前にSFドラマ『ゼロ・グラビティ』(Gravity)で同賞を受賞。

一方で、初ノミネートされたスパイク・リー監督を推す声も多い。『ブラック・クランズマン』は、70年代に黒人警察がKKK(白人至上主義団体)に潜入捜査を行った実話に基づくドラマ。
バラエティは、過去6年間で4作品は、作品賞と監督賞の受賞者が異なるとして、スパイク・リー監督が選ばれる可能性をあげた。受賞の場合、黒人監督として初の監督賞となる。

外国語映画

SHOPLIFTER 万引き家族
©Magnolia Pictures

同部門では、カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドール受賞の是枝裕和監督『万引き家族』(Shoplifters)がノミネートされている。
多くのメディアは『ローマ』の獲得を予想。『ローマ』は、作品賞と外国語映画賞を受賞する初めての作品となる可能性がある。
一方、ニューヨーカーとバラエティは、ポーランド人監督、パヴェウ・パヴリコフスキ(Paweł Pawlikowski)監督の『コールドウォー』(Cold War)の受賞を予想した。

長編アニメ賞

同部門では、細田守監督の『未来のミライ』(Mirai)がノミネーションされている。多くのメディアは、ヒスパニックを主人公としたスパイダーマンのアニメ化作品『スパイダーマン:スパイダーバース』を予想している。
過去11年間で、ディズニーやピクサー以外の製作会社が受賞したのは1度のみ。ピクサーの『インクレディブル・ファミリー』(Incredibles 2)を破り、スパイダーマンが受賞するとソニー・ピクチャーズ初の受賞となる。

賞の開催はいつ?

アカデミー賞授賞式は、現地時間2月24日夜(日本時間25日午前)に開催される。米国ではABC、日本ではWOWOWで放送される。
注目のノミネーション作品はこちら!
アカデミー賞ノミネート作品一覧(英語)

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