ホーム ニュース エンターテイメント 映画『グリーンブック』真実...

映画『グリーンブック』真実の物語とは?

教養ある黒人ピアニストが、白人ドライバーを雇い、ニューヨークから南部へとコンサートツアーへ出かけるロードトリップ映画『グリーンブック』(ユニバーサル映画)。
映画タイトルでもある「Green Book」とは?実在のピアニスト、ドン・シャーリーや映画のみどころを紹介する。

『グリーンブック』ストーリー

カーネギー・ホールに住む裕福で、才能ある黒人ピアニスト、ドン・シャーリー(Don Shirley)は、南部へのコンサートツアーに出かけるため、ブロンクスに住むトニー・リップ(Tony Lip)をドライバーとして雇う。リップは、労働者階級のイタリア系アメリカ人で、腕っ節の強いバーテンダー。ニューヨークを出発した2人は、1960年代の人種差別的な行為が公然と行われる南部の州へと向う。果たして、シャーリーの旅の目的は?数々の人種差別的な行為に直面しながらも、育まれていく2人の友情を描く。

グリーンブック
Mahershala Ali (L) and Viggo Mortensen (R) Vladimir Yazev / Shutterstock.com

映画は実在の人物を元に製作。リップの息子、ニック・ヴァッレロンガ(Nick Vallelonga)が、父親から聞いた話や、シャーリー自身へのインタビューを元に共同脚本を執筆した。

- Advertisement -

監督は、『メリーに首ったけ』などのピーター・ファレリー(Peter Farrelly)。ヴィゴ・モーテンセン(Viggo Mortensen)が60代ながら32歳のリップ役を、『ムーンライト』でアカデミー助演男優賞を受賞したマハーシャラ・アリ(Mahershala Ali)が、シャーリー役を演じる。
同作品は、トロント国際映画祭で観客賞を受賞。1月6日に開催されるゴールデン・グローブ賞に5部門でノミネートされている。

米国では11月16日に25スクリーンで限定公開の後、翌サンクスギビングデーの週末に1,000スクリーンで拡大公開され、初登場9位となった。週末3日間の興行収入が540万ドルと、それほど良い成績ではなかったが、出口調査を行うシネマスコア(CinemaScore)ではA+の高評価を獲得。ゴールデン・グローブ賞でのノミネート効果もあり、堅調な数字を維持している。
日本では3月1日に公開される。

グリーン・ブックとは?

グリーン・ブックは、1930年代から1960年代に発行されたアフリカ系アメリカ人のための旅行ガイドブック「ニグロ・モータリスト・グリーン・ブック」(The Negro Motorist Green Book)の略称。

GreenBook
GreenBook via NYPL

米南部における有色人種の公共施設の利用などを禁じたジム・クロウ法(Jim Crow laws)の元、黒人が安全に利用出来るレストランや宿泊施設、ガソリン所などのリストが掲載されており、旅のバイブルとして使用された。映画では、ニューヨークを出発する際、ドライバーのリップに冊子が手渡された。

ガイドは、ハーレムに住む郵便局員で、市民団体の指導者のヴィクター・グリーン(Victor H. Green)によって、1936年から1967年まで出版された。ニューヨークパブリックライブラリーでは、電子版を閲覧することができる。

黒人ピアニスト、ドン・シャーリー

シャーリーはジャマイカ出身の両親の元、フロリダ州ペンサコーラ(Pensacola)で生まれ、裕福な家庭環境で育った。
ニューヨークタイムズによると、父親は聖公会の牧師で、母親は教師だった。シャーリーは、幼い頃からクラッシックピアノの才能を発揮した。
映画では、語学に長け、ロマンチックな文章を綴る教養ある人物と描かれている。

18歳の時、シカゴで開催されたボストン・ポップス・オーケストラ(Boston Pops)で、チャイコフスキーピアノ協奏曲第1番を演奏し、デビューを果たす。
学校は卒業していなかったが、輝かしい功績により「ドクター・シャーリー」と呼ばれていた。

2年後、黒人歌手のマリアン・アンダーソン(Marian Anderson)をプロデュースした興行主のソル・ヒューロック(Sol Hurok)のアドバイスを受け、ポップ、キャバレー、ゴスペル、室内楽など幅広いジャンルの音楽を演奏するようになった。デトロイトやシカゴ、クリーブランドなどの交響楽団のソリストとして活躍している。

60年代初期に、シャーリーは、ケイデンス・レコード(Cadence Records)から作品を発表し、コロンビア・アーティスト・マネジメントと契約。グリニッジ・ヴィレッジのCookeryなどで定期的に演奏を行っていた。コロンビアは、グリーン・ブックのツアーのブッキングも行った。

シャーリーは2013年、86歳で亡くなるまで50年以上、カーネギー・ホールの上階に住んでいた。同ホールでは、1年に1度トリオで演奏会を行っている。
1955年には、デューク・エリントン(Duke Ellington)のカーネギーデビューコンサート「New World a-Comin」でも、演奏を行っている。

リップは俳優として活躍

シャーリーと友情を育んだドライバー、トニー・リップこと本名フランク・ヴァッレロンガ(Frank Vallelonga)は、マイナーリーグで野球選手と、戦後ドイツで兵役に務めた後、マンハッタンのコパカバーナ・クラブ(Copacabana club)で、マネージャーとして働いた。そこで、フランシス・フォード・コッポラ(Francis Ford Coppola)など出会い、『ゴッドファーザー』(The Godfather)に端役として出演する。
シャーリーとの旅から戻った後も『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』(The Sopranos)などに出演するなど俳優としてのキャリアを築いた。リップもシャーリーと同年の2013年に死去している。

現在も残る差別

ナショナル・ジオグラフィックが公開した2015年のSTANFORD UNIVERSITY OPEN POLICING PROJECTのデータによると、24州のうち19州ではアフリカ系アメリカ人のドライバーは、白人に比べて警察による停止を求められる傾向にあるという。

昨年10月、米国で最も歴史のある人権団体、全米黒人地位向上協会(NAACP)は、人種差別の被害を受けるリスクが高いとして、ミズーリ州を旅行する人や、アメリカン航空を利用する黒人に対して、旅行の自粛を呼び掛けた

米スターバックスでは、昨年フィラデルフィアの店舗で起きた白人スタッフによる警察への黒人通報事件をきっかけに、全8,000店舗を休業し、人種の偏見に関する研修を実施した。



TOP STORIES