アカデミー賞 人気作品部門を新設。批評家からは疑問の声

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アカデミー賞 ポピュラー
Featureflash Photo Agency / Shutterstock.com

8日、映画芸術科学アカデミー(the Academy of Motion Picture Arts and Sciences)は、次回のアカデミー賞授賞式から、優れた興行成績を収める作品に「人気部門」(popular)を新設すると発表した。

具体的なノミネートの要件については明らかにされておらず、今後詳細が発表される予定だという。複数の報道によると、「スター・ウォーズ」シリーズや、「ミッション・インポッシブル」などのアクション映画、「ワンダー・ウーマン」のようなマーベルやDCコミック作品など、興行的に成功を収めながら、賞レースではノミネートされてこなかったブロックバスター作品が、今後ノミネートされるだろうと予測されている。

会員に宛てた書簡の中で、ジョン・ベイリー(John Bailey)会長とダウン・ハドソン(Dawn Hudson)最高経営責任者は、「変わりゆく世の中で、オスカーとアカデミーを対応させていくために、多くの人々から、必要とされる改善について話を聞いた」とし、「我々の責務を真摯に受け止めており、これらのステップと詳細を明らかにできるのを楽しみにしている。」と述べたという。

批評家からは批判の声

この発表に対して、部門の必要性に疑問を呈する声も多い。アフリカ系アメリカ人をキャストやメインキャラクターに起用し、今年大ヒットした「ブラック・パンサー」(Black Panther)が、革新的な作品であるにもかかわらず、ポピュラー部門にノミネートされるのではないかという懸念も寄せられている。

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ニューヨークタイムズの批評家、Manohla Dargisは、「愚かな、侮辱的、哀れで、絶望的な変更だ。」とFワード付きでツイッターに投稿した。

NPRのLinda Holmesは、「人気作品と、良質の作品の部門を設けるのは、良いアイデアのように思える。それは私が意味するところの、なんたる不幸。」と疑問を呈するツイートを投稿した。

Vox.comの批評家、Todd VanDerWerffは、「アニメーション/ドキュメンタリー/外国語」カテゴリーと同じ効果を生み出す。ブロックバスター作品の内容が良かったら、作品賞にノミネートすればいい。」とし「ポピュラー部門は、愚かな考えだ。」と非難している。

好意的な意見も見られたが、視聴率を稼ぐために、ホットなキス部門や、ベストスタント部門を設けたらどうかと、アカデミーを揶揄する声も上がっている。

授賞式は短縮

授賞式の時間も3時間50分から3時間へと短縮する。今年は25部門がオンエアされたが、来年はいくつかの部門は、CM放送中の発表となる。受賞発表の瞬間は、編集シーンを後ほどオンエアするという。

なお、2019年の第91回授賞式は、来年2月24日に開催されるが、2020年の授賞式は、日程を前倒し2月9日となる。

視聴者数の低迷

アカデミーの視聴者数は、ブロックバスター映画が多くノミネートされた年は、視聴率が上がる傾向にあるという。コメディアンのジミー・キンメルが司会を務めた今年のアカデミー賞は、視聴者数が2,650万人となり、昨年の3,300万人を約20%下回る過去最低の数字を記録した。
作品賞を受賞したギレルモ・デル・トロ監督の「シェイプ・オブ・ウォーター」は、米国内の興行収入が、5,740万ドル(約63億円)に止まっている。

USA TODAYによると、過去2番目に低い視聴者だったのは、コーエン兄弟の「ノーカントリー」(No Country for Old Men)が作品賞を受賞した2008年で、3,200万人だった。記録的に大ヒットしたジェームズ・キャメロン監督の映画「タイタニック」(Titanic)が、作品賞を含む10部門を受賞した年は、5,500万人が視聴したという。「ムーンライト」が作品賞を受賞した2017年の視聴者は3,300万人と発表されている。

ニューヨークタイムズによると、アカデミー賞の放映はビッグビジネスであり、アカデミーは、年間収入1億4,800万ドル(約163億円)のうち83%をテレビ放映で収益を上げているという。
ABCは、2028年まで1年につき7,500万ドル(約82.5億円)でアカデミー賞の放映権を獲得しており、直近の回のCMは30秒で280万ドル(約3億円)とされている。視聴者数の低迷は、スポンサー収入にも影響を与える。

アカデミー賞だけでなく、CBSで放映されたグラミー賞は24%減の1,980万人、NBCで放映されたゴールデン・グローブ賞は5%減の1,900万人と視聴者数は、減少する傾向にある。