『ボヘミアン・ラプソディ』全米初登場1位。辛口批評と製作トラブルはねのけ

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英伝説のロックバンド、クイーン(Queen)のリードシンガー、フレディ・マーキュリー(Freddie Mercury)の伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』(Bohemian Rhapsody)が2日全米で公開され、オープニング週末の北米興行収入5,000万ドル(約56億6,000万円)となる予測で、初登場1位となった。

全世界でヒット

製作費5,200万ドル(約60億円)の『ボヘミアン・ラプソディ』(20世紀フォックス)は、英国やオーストラリアなどでも公開され、オープニング週末の全世界興行収入1億4,100万ドル(約160億円)を稼ぎ出す大ヒットスタートとなっている。

フォーブス誌によると、音楽伝記映画としては、ヒップホップ・グループ、N.W.A.を描いた2015年米公開の『ストレイト・アウタ・コンプトン』(Straight Outta Compton)の6,000万ドルに次ぐ高い興収となる。

辛口批評や製作トラブルも

作品は、バンドの結成から、「ボヘミアン・ラプソディ」や「ウィ・ウィル・ロック・ユー」などの製作秘話、家族や妻、バンド仲間との関係、バンドの実質的な再結成といわれる、1985年のアフリカ救済のためのチャリティコンサート「ライヴエイド」(LIVE AID)までを描く。

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プロデュースは、グレアム・キング(Graham King)が務め、クイーンのギタリストのブライアン・メイ(Brian May)とドラマーのロジャー・テイラー(Roger Taylor)ほか、長きにわたりクイーンのマネージャーを務めたジム・ビーチ(Jim Beach)らも製作に関わっている。

映画批評家による作品の評価は、否定的か、可もなく不可もないという評価が目立っていた。
「俳優は素晴らしいが、内容はウィキペディアのスキミングのよう。・・・映画は素晴らしくそれなりに”大きく”見えるだろうが、これは完全に奇妙な不発。・・・ラミ・マレックはチャンピオンだが、他のものはルーザー(負け犬)だ。」(フォーブス)
「緊張感のない、想像力に乏しい、様式化された作品」(ニューヨークタイムズ)
「この映画は君をロックするだろうが、ショックは与えなさそうだ。」(タイムアウトニューヨーク)
ロッテントマトの批評家によるレビュー(トマトメーカー)は60%となっている。

また、製作上のトラブルも話題となっていた。当初主演に抜擢されていたサシャ・バロン・コーエン(Sacha Baron Cohen)が2013年に降板。最終的には、『ミスター・ロボット』(Mr. Robot)のラミ・マレック(Rami Malek)に決定した。

ブライアン・シンガー(Bryan Singer)監督は、製作後半で、デクスター・フレッチャー(Dexter Fletcher)監督に交代。シンガー監督は、ラミ・マレックと衝突した、現場に突然姿を現さなくなった後、20世紀フォックスから解雇された。
同監督は、病気の両親を介抱するため休暇を取ろうとしたが、スタジオが認めなかったため、降板したと声明で発表している。
また、シンガー監督には、性的嫌がらせに関する疑惑も浮上した。(作品のクレジットには、シンガー監督のみが残っている。)

観客からは高評価

公開直後、観客からは高評価が相次いだ。オープニング夜の出口調査CinemaScoreでは、評価Aを獲得。ComscoreのPostTrakでは、5つ星中の4 1/2となっている。

観客層については、女性が51%で男女ほぼ半々、25歳以上が78%、人種構成は、62%が白人、20%がヒスパニック、8%アジア系、6%アフリカ系アメリカ人となっている。(80年代活躍したクイーンのコアなファン層は現在40-50代となる。)

米ウェブメディアのVOXは、潜在的な観客の大部分は、その作品のクオリティを問わず、作品がもたらす経験を熱望しているため、高い興行成績をもたらすとしており、『ボヘミアン』はそれに当てはまるとしている。

マーベルの『ヴェノム』(Venom)は、低い評価にも関わらず、出口調査のシネマスコアでBを獲得し、全米初登場1位を獲得。また40年ぶりの続編が公開された『ハロウィン』(Halloween)も、そこそこの批評ながら2週連続1位の大ヒットをおさめた。
レディー・ガガ主演、ブラッドリー・クーパーが主演と監督を務めたリメイク作品『アリー/スタア誕生』(A Star Is Born)は、高批評でシネマスコアA評価を獲得。『スタア誕生は』初登場2位を記録しており、コアな固定客によって、オープニング週末の高い興収を達成した例として挙げられている。

加えて、最近米国では、『ラ・ラ・ランド』や、『グレイテスト・ショーマン』、『アリー/スタア誕生』、続編『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』などミュージカル作品のヒットが続いている。

『ボヘミアン・ラプソディ』は、日本では11月9日より公開となる。

話題のディズニー作品は?

「ボヘミアン」と並び、同週末に公開されたディズニー映画『くるみ割り人形と秘密の王国』(The Nutcracker and the Four Realms)は、2,000万ドルで2位を獲得した。同作品の製作費は1億2,500万ドル(約140億円)の大作映画となっている。