NY市で犯罪件数が急増、囚人解放や新保釈制度が要因か

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独立記念日の週末、ニューヨーク市では44件の発砲事件が発生した。64人が銃撃を受け、11人が死亡した。ブロンクスでは5日、6歳の娘と手をつないで歩いていた男性が、車で近づいてきた男性に射殺される事件が発生している。

ニューヨーク市警察のテレンス・モナハン(Terence Monahan)警視総監は6日の会見で、保釈金制度や、新型コロナ拡大に伴うライカーズ島の囚人解放、裁判所の閉鎖などが犯罪増加を招いていると発表した。

6月の殺人事件は39件で、前年同月の30件から30%増加した。発砲件数は205件で、前年の89件から130%増加。1996年以来最も高い水準となった。
殺人事件の半数はブルックリン、ブロンクス、ハーレムの10管区で発生している。死亡したのは、全員有色人種だった。

また家族経営など小規模店を狙った強盗件数は1,783件で、前年の817件から118%増加。車の盗難も前年の462台から696台へと50%増加した。

同席したMichael LiPetri氏は「新たな保釈金制度の元、ライカーズ島から釈放された3,000人が、9,000件の重大犯罪を犯した。」と語った。パンデミック以降、収監された者はおらず、裁判所も機能していないため、より多くの犯罪を犯すことができると指摘した。

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ライカーズ島から早期に釈放された2500人のうち、75%は重罪で有罪判決を受けており、これには性犯罪者も含まれるという。2019年以降、2,000人が銃暴力で逮捕されており、その大半が既に釈放されている。最近発生した発砲事件にも関与している可能性があるという。

保釈金制度は再び改定

刑事司法制度改革の一環として今年1月から施行された保釈制度は、ほとんどの軽犯罪および暴力行為以外の重罪について、裁判官は保釈金を設定することができない。犯罪の増加を背景に、制度見直しの声が高まり、7月2日より一部が改定された。新制度では、死亡につながる犯罪など約25種類の犯罪について、保釈金を設定することができる。また保護観察中や仮釈放中に重罪を犯した人物、過去に2件以上の重罪の有罪判決を受け、再び重罪で逮捕された人物は、保釈対象としない。

デブラシオ市長は発砲事件の増加に関し、6日の会見で「警備を強化しなければならない」と語った。裁判所システムが機能していないことや、経済の停滞、人々がロックダウンで封じ込められているなどを要因として挙げた。

モロイカレッジの教授で元NYPD警部、John Eterno氏はニューヨークタイムズに対し、警察に対する政治家や市民からの非難の増加と、警察官の士気の低下に関連し、銃撃件数が増加していると指摘。またNYPDは、路上での呼び止めや、先日解散した私服警官の防犯部隊などに代わる効果的な取り締まり戦略の策定ができていないと語った。

ニューヨーク市では先月30日、881億ドルの2021年度予算が成立した。新型コロナの影響による財政赤字に加え、ジョージ・フロイドさんの死亡事件を契機に高まった「デファンド・ポリス」の声を背景に、警察部門の年間予算60億ドルから10億ドルが削減された。