米ドラマ「Empire」俳優 被害者から一転 ヘイトクライム「自作自演」の疑いで起訴

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シカゴ市警察は20日、ドラマ『エンパイア』に出演する俳優のジャシー・スモレット(Jussie Smollett)氏が、憎悪犯罪(ヘイトクライム)の標的になったと主張する事件について、スモレット氏が警察に虚偽の報告を行なったとし、犯罪捜査の容疑者となったことを発表した。

この後、スモレット氏は治安紊乱行為の罪で、イリノイ州の大陪審によって起訴された。スモレット氏は、1年から3年の禁固刑および捜査に関わる費用の支払いなどが求められる可能性があるという。

スモレット氏は、21日の1時30分、クック郡の裁判所に出廷することを明らかにした。

事件の経緯

スモレット氏は1月29日深夜2時頃、シカゴで通りを歩いている際に、白人らしき2人の男性から暴行を受けたとして、警察に通報した。

スモレット氏は、2015年にゲイであることを公言している。シカゴ市警察の発表によると、スモレット氏が深夜歩いていた時、マスク姿の2人の男性が彼に近づいてきた。そして、性差別、人種差別的な言葉を叫び、顔を殴り始めた。さらに「なんらかの化学物質」をかけたと主張。その後、1人の男性が、スモレット氏の首にロープを回したという。警察は、この事件を真剣に受け止めるとして、ヘイトクライム(憎悪犯罪)の可能性があると述べた。

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シカゴ・サン・タイムズ(The Chicago Sun-Times)によると、警察の広報担当者は、スモレット氏は攻撃された後、自身のアパートに戻り、マネージャーが警察に通報したと明かした。警察官がアパートに駆けつけた時、細い軽量の紐が彼の首に巻きついていたという。また、その後のサンタイムズの報道で、犯人が「これが、MAGA(トランプ大統領のスローガン)カントリーだ。」と叫んでいたことが分かった。

29日、シカゴ市警察は、事件現場付近の監視カメラには、容疑者に関する有力な情報が映っておらず、エリアを拡大して捜査すると発表した。

憎悪犯罪が増加する中、黒人でゲイの著名な俳優が被害にあったとして、スモレット氏には、多くの同情や励まし、怒りが寄せられた。

大統領選に出馬を表明しているコーリー・ブッカー(Cory Booker)上院議員は、上院議員を通過したリンチ事件による刑の厳罰化法案に関して、下院も早急に採決するよう呼びかけた。

同性愛者の権利擁護団体GLAADも、Foxやスモレット氏へのチームに支援や援助を呼びかけた。

ニューヨークタイムズによると、捜査担当者は当初から、スモレット氏の話の裏付けが困難であるとして、捜査チームの中で疑問が高まっていたという。
スモレット氏は、暴行を受けた直後に現場から通報しておらず、家に戻った後に通報した。また加害者が、彼の首にかけた紐をそのまま身につけおり、どの監視カメラにも犯行の様子が映っておらず、目撃者もいなかった。

捜査官は、現場近くの監視カメラに映っていた2人の男性を追跡。2人はナイジュリア人の兄弟で、名前はOlabinjo OsundairoさんとAbimbola Osundairoさんであることが判明。

2月13日、シカゴ市警察は、容疑者の可能性と思われる2人を拘束したと発表。
14日、渦中のスモレット氏は、ABCのグッドモーニングアメリカに出演し、その時の状況を目に涙を浮かべ語った。

同日、シカゴ市警察は、拘束した人物のうち1人が、ドラマ『エンパイア』のエキストラとして出演していたことを明かした。
15日、2人の兄弟は釈放。
16日、CNNなど複数のメディアが、兄弟が事件の捏造に加担する代わりに、報酬を受け取っていたことを捜査官に明らかにしたことを報じた。
20日、兄弟が陪審員の前で証言を行ったことが明らかとなった。
さらに、シカゴ市警察は、兄弟がマスクやMAGAハットなどを購入していた際の映像を公開した。