計画はドラマ並み?ヘイトクライム「自作自演」疑惑の米俳優 裁判

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今週月曜日から始まった俳優ジャシー・スモレットの裁判。3日目となった1日は、ヘイトクライムをでっち上げるのを手伝う代わりに、報酬を受け取ったと主張する証人が、証言台に立った。

2019年1月、FOXドラマ「Empire 成功の代償」に出演していたスモレットが、憎悪犯罪の被害に遭ったと通報があった。スモレットは警察の調べに、マスク姿の男2人から暴行を受けた上に、化学薬品をかけられ、首に縄をかけられたと証言。また、犯人らが人種差別かつ同性愛者を嫌悪する言葉を叫んだほか、「これがMAGAの国だ」と怒鳴ったなどと話した。

警察はその後、ナイジュリア出身の兄弟2人を拘束した。しかし、2人の話から、スモレットが金銭を支払って仕組んだ自作自演であった疑いが浮上。2月には、被害者の立場から一転、虚偽報告や治安紊乱行為など16件の罪で起訴された。起訴は一旦取り下げられたが、
同年6月、クック郡裁判所の判事から任命された特別検察官が、不起訴の正当性を調査し、6つの治安紊乱行為の罪で再び起訴された。

↓29日に母親とともに出廷するスモレットの様子

ニューヨークポスト紙によると、シカゴの刑事裁判所に証人として出廷した兄弟の1人、アビンボラ・オスンダイロ氏(28)は、「彼(スモレット)が、フェイクで殴り倒してほしいと説明した」と証言。依頼に応じた理由を「彼に感謝していたから」と述べ、「彼は私に”エンパイア”で代役をくれたし、私が俳優のキャリアを進むのを、助けてくれると信じていた」と話した。

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オスンダイロ氏は、スモレットと2017年以来の知り合いだと説明。一緒に大麻を吸ったり、ストリップクラブを訪れたり、スモレットの家で寝泊まりするなど、極めて親しい時期もあったと述べた。スモレットを「兄弟」と呼ぶ間柄で、大麻やコカイン、エクスタシーを調達するのを頼まれたこともあったと明かした。

詳細を指示、ロケハンも

スモレットから相談があったのは事件の4日前。「秘密」の頼みごとがあり、会って話ができないかとメッセージを受け取った。同日午後、スモレットのベンツの中で、計画を明かされた。

スモレットは、この数日前に、撮影所で受け取った脅迫状が、真剣に取り合われなかったことについて話したという。

スモレットは、オスンダイロ氏の兄弟にも手伝って欲しいと要求。その後、2人に対して、黒人に対する差別用語や「MAGA」など、使ってほしい言葉や暴行の方法について、詳しい指示を与えた。

オスンダイロ氏は「彼は、自分もやり返したように見えたかったから、私が、彼にやり返しの機会を与えるはずだった。最後に、彼を地面に投げ飛ばして、私の兄弟が彼に首縄をして、薬品をかけることになっていた」と語った。

さらに、スモレットは2人に、携帯電話を持たないように指示。落とす危険を考えてのことだった。位置を特定されないようライドシェアサービスを使用しないよう命じたほか、ニュースで取り上げられた際には「見舞いの手紙」を送るよう指示したという。

オスンダイロ氏は陪審に、計画立案に要した時間は10分たらずで、この2日後にはドレスリハーサルをしたと証言した。

本番前日には現場を訪れ、正確な場所を確認。スモレットは、監視カメラの位置についても話したという。検察官から、なぜ暴行の様子をカメラに撮影されたかったのかと質問を受けると、オスンダイロ氏は、スモレットは「映像をメディアたのために使いたかった」と答えたという。

当日は、暴行を捉えるはずのカメラがあさっての方向に向けられていたが、これ以外は計画通りに進んだという。

NBCニュースによると、スモレットの罪状は、有罪となれば禁錮3年に処される可能性があるものの、犯罪歴がなく、誰も危害を受けていないことから、実刑の可能性は低い。代わりに、保護観察処分を受け、おそらくコミュニティサービスを命じられるだろう伝えている。