米議会襲撃事件「Qアノン・シャーマン」精神鑑定へ 米連邦地裁が命令

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今年1月6日の米議会議事堂襲撃事件に加わり、起訴された 「Qアノン・シャーマン」ことジェイコブ・チャンスリー被告(Jacob Chansley)被告(33)について、首都ワシントンの連邦地方裁判所は、状況把握能力などを判別するため精神鑑定を命じた。Law&Crimeが伝えた。

被告の弁護士はこの数日前、メディアの取材に、チャンスリー氏を「ショートバス」(short-bus、精神障害のある人を表す俗語)と呼び、トランプ前大統領の「プロパガンダ」の影響を受けやすい状況にあったと示唆。波紋を広げていた。

チャンスレー被告は、上半身裸で角のついた獣の毛皮をかぶり、顔を赤・白・青にペイントし、米国旗を先端に結びつけた槍を持って議事堂に押し入った。ペンス副大統領の席に座り、記念撮影。さらに「もはや時間の問題だ。裁きが下される」と書いたメモを残していた

被告はその後、不法侵入および暴力行為、議事堂敷地内での無秩序な行動などの罪状で起訴されたが、ワシントン連邦地裁のロイス・ランバース(Royce C. Lamberth)判事は21日、刑事訴訟手続きに関する、合衆国法典第18 編第313条4241項(18 U.S. Code SS4241a-b)に基づく「正当な理由」があるとして、チャンスレー被告に精神鑑定を行うよう命じた。
同条項では「被告人に現在、精神疾患または精神的な欠陥があり、問題の本質や結果の把握または適切な弁護が困難と判断する正当な理由がある場合、精神鑑定の必要性を認める」と定めている。

ランバース判事は、チャンスレー被告を米司法長官の監督下に置き、「最大30日間、専門の施設で」精神科医または臨床心理士による鑑定を受けさせるよう指示。鑑定にあたる医師は、被告人の診断結果とその後の見立て、そして被告人の状況把握能力などについて意見を提示することになる。

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チャンスリー被告の弁護人を務めるアル・ワトキンス(Al Watkins)氏は、裁判前の拘留が被告人に多大な精神的負担を強いていたと精神鑑定の必要性を主張。ワシントン・ポストによると、ワトキンス氏はパンデミック下での規制についても触れ、一日最大22時間外部と遮断された状況は「例え健康な人でも困難」とした上で、「私の目的は、被告が衰弱することなく、健康面で必要なケアを最大限に受けさせること」と述べた。

米メディア、バズフィードのゾイ・ティルマン(Zoe Tillman)記者によると、検察側はチャンスレー被告を鑑定にかけることには異議を唱えていない。ただし「弁護側が裁判での責任能力を問い始めた場合」や「被告人の裁判前の拘留を回避しようとした場合」は、検察側が反発するだろうとしている。

弁護士が過激発言

今回の裁判所命令に先駆け、ワトキンス弁護士は18日、米政治メディアサイト「トーキング・ポインツ・メモ」のインタビューで、チャンスリー被告を含む議事堂乱入の参加者たちについて過激なコメントをし、話題になった。

ワトキンス氏は「口は悪いが」と断りつつ、議事堂乱入事件で起訴された人々の多くは「最悪の精神障害者たちだ」「脳にダメージを負った完全な知的障害者で、確実に精神的な問題を抱えている」などと語った。その上で「しかし彼らはわれわれの兄弟であり、姉妹であり、隣人であり、同僚でもある。みな同じ国の一員だ」と続け「彼らは悪い人間ではなく、犯罪歴もない。世界でヒトラー以降例を見なかった無教養なプロパガンダに4年間もさらされた結果だ」と、デモ参加者自身もトランプ前大統領の被害者だと擁護した。

ワトキンス氏は以前にも、トランプ氏をナチスに例えて非難したことがある。今年2月のLaw&Crimeのインタビューで、議事堂襲撃事件の弁護と、ナチスのニュルンベルク裁判の弁護との類似点を問われた際、トランプ前政権について「1933年のミュンヘン以来の性質と性格を持ったプロパガンダ」だと述べていた。

チャンスリー氏は議会に入った後、FBIの聴取に対し「すべての”愛国者”は、DCに来るようにという大統領の要請で」首都ワシントンを訪れたと答えたという

CBSニュースによると、議事堂乱入事件に関連して、これまでに400人以上が起訴されている。司法省は、少なくとも100人が追加で起訴される可能性があると同局の取材に答えている。