連邦捜査局（FBI）は9日、議事堂への暴力的な不法侵入や治安紊乱行為などの容疑で、アリゾナ州在住のジェイク・アンジェリ（Jake Angeli）ことジェイコブ・アンソニー・チャンスリー（Jacob Anthony Chansley）容疑者ら3人を逮捕したと発表した。
「Qシャーマン」（Q Shaman）の名で知られるチャンスリー氏は6日、角がついた毛皮の帽子、トリコカラーのフェイスペイント、上半身裸にタトゥー、バイキングのような出で立ちで、星条旗を結びつけた長い槍を持ち、議事堂に押し入った。議員らが退避した後、上院の議場に侵入し、ガッツボーズをする姿などが、多くのメディアで取り上げられている。
ロイターの記者によると、チャンスリー氏はFBIの聴取に対し「すべての”愛国者”は、DCに来るようにという大統領の要請で」首都ワシントンを訪れたと答えたという。
チャンスリー氏は当日、NBCニュースに「ここにいる多くの売国奴にガスマスクをつけさせ、地下要塞に退避させたという事実からすると、俺たちは勝利したことになる」と語っていた。
また他のメディアに「警察は途中で制するのを諦め、支持者を建物内に入れた。その後、警察に逮捕せずに行かせてくれと丁寧に頼んだ」と状況を語った。
アンティファ説が拡散
事件当日、チャンスリー氏はトランプ支持者ではなく、左翼の過激派アンティファとの偽情報がSNSに出回っていた。
しかし、チャンスリー氏はこれまで、トランプ支持者の集会やアリゾナ州の投票集計所で活動する姿がビデオに収められており、地元メディアのアリゾナセントラルは同氏を、アリゾナにおける右派の政治集会ではお馴染みの存在と報じている。
チャンスリー氏は、少なくとも2019年から州議会議事堂付近でQアノンに関連する様々な陰謀論を触れ回っていたという。アリゾナ・リパブリックの昨年のインタビューでは、バイキング姿は人目を引くためで、人々にQアノンの考えと真実を話すことができるからだと答えている。
選挙後、アリゾナ州マリコパ郡の集計所で、「Qが私をよこした」と書かれたプラカードを持って群衆に演説する様子が投稿されている。
事件後、トランプシンパの弁護士リン・ウッド氏も、チャンスリー氏はアンティファだとツイート。投稿は1万3000回以上リツイートされていた。
新人州議会議員も逮捕
このほか、フロリダ在住のアダム・クリスチャン・ジョンソン（Adam Christian Johnson）容疑者（36）も逮捕された。ナンシー・ペロシ下院議長の演説用の台を持ち出しながら、カメラマンに手を振る姿が話題となっていた。
同氏は不法侵入、政府所有物の盗難や、治安紊乱行為などの容疑に問われている。1000ドル相当の演説台は、のちに議事堂内で発見された。
ウエストバージニア州で州議会議員に初めて選出されたデリック・エバンス（Derrick Evans）容疑者（共和党）は、立入禁止区域に侵入したとして、連邦法違反で起訴された。
エバンス氏はヘルメットを被り、議事堂内に押し入る様子を自ら配信していた。起訴後、同氏はジム・ジャスティス州知事に辞任を申し出た。
7日には、ペロシ下院議長の部屋に侵入し、アーカンソー州出身のリチャード・バネット（Richard Barnett）容疑者が、窃盗や不法侵入など3件の容疑で逮捕された。バネット氏は、机に足を上げ、記念撮影。卓上の手紙を盗んだほか、「B＊＊＊＊」とメモを残したという。
ペロシ氏の部屋にはこの日、バネット氏のほか、テキサス州ミッドランドの元市長候補ジェニー・カッド（Jenny Cudd）氏など複数人が押し入ったという。
NBCニュースは、ペロシ氏のオフィスは荒らされ、部屋からプレゼンテーション用に使用していたパソコンが盗まれたと報じている。
議事堂では6日、次期大統領を認定するための両院合同本会議が行われていた。会議前に、議事堂の近くではトランプ氏やジュリアーニ氏らが、選挙の不正を訴えるための抗議集会を行っていた。トランプ氏の支持者が、議事堂に乱入したことで、会議は一時中断。議員らは退避を余儀なくされた。
騒動により、警察官のブライアン・シックニック氏や、退役軍人のアシュリー・バビット氏を含む5人の死者が出ている。
FBIは、議事堂内の監視カメラやSNSに投稿された動画などを元に、侵入者を公開。一般人からの情報提供を呼びかけている。
両党の全国委員会本部付近で爆発物が発見された件に関して、容疑者に関する情報提供に5万ドルの懸賞金を出すと発表した。
