映画『バービー』アカデミー賞ノミネートの結果にヒラリー・クリントンが想うこと

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監督賞と主演女優賞ノミネート逃したのは「ガラスの天井」のせい?

アカデミー賞は授賞式もさることながら、ノミネートをめぐって賛否の議論が絶えない。今年、最も予想外とされたのは、昨年の興行収入トップ、女性監督作として過去最高を記録したブロックバスター『バービー』で、作品賞にノミネートされたものの、ファンの期待に反してグレタ・ガーヴィグとマーゴット・ロビーはそれぞれ、監督賞と主演女優賞の候補に残らなかった。

この結果に、ケン役で助演男優賞にノミネートされたライアン・ゴズリングは、「失望したといっても過言ではない」と批判した。

ファンからは、映画のポイントそのものではないかといった声も相次いだ。

「バービーの落選は、まさにこの映画の要点を証明している」

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映画では、「バービーランド」の外に飛び出したバービーとケンが、リアルワールドでは男性が男というだけで優位な社会であることを知る。これを謳歌したケンが、バービーの理想郷にその原理を持ち込もうとする。

ネットやメディアでは、ジェンダーバイアスやジャンルに対する偏見を指摘する声など、さまざま意見が飛び交っているが、これに政界の大物も加わった。

ヒラリー・クリントン元国務長官は24日、X(旧ツイッター)のアカウントを更新。「グレタとマーゴット」に宛て、「興行収入を上げても、金メダルを手に入れられないことに痛みを感じるかもしれないが、何百万ものファンがあなた方を愛している」と声援を送り、「あなた方ははるかにKenough(KenとEnoughを合わせた造語)を超える存在よ」と続けた。さらにハッシュタグ「#HillaryBarbie」を加え、かつてあと一歩のところで大統領の座を逃した自分を重ねた。

2008年大統領選の民主党予備選でオバマ氏に敗れたヒラリー氏は、敗北スピーチで、「高くて、最も硬いガラスの天井を打ち破ることはできなかった」と、女性の進出を阻む見えない壁に言及した。

予備選を勝ち抜き、初の女性大統領誕生の可能性に沸いた2016年大統領選では、大方の予想に反してドナルド・トランプ氏に敗北。支持者らの間にショックが広がる中、「高くて、最も硬いガラスの天井をまだ打ち破っていないことはわかっている」と改めて述べ、「いつか誰かが、できれば今私たちが考えているよりも早く、それを打ち破ってくれるだろう」と後進に望みを託した。