動物虐待?グッゲンハイム特別展 非難受け一部展示中止

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26日、ニューヨークのグッゲンハイム美術館(Guggenheim Museum)は、10月6日から開催の特別展「Art and China after 1989: Theater of the World」に関し、一部の作品の展示取り下げを発表した。中止されたのは、かねてから議論に上がっていた3作品で、理由は「スタッフやビジター、参加アーティストの安全への配慮」としている。

この特別展は、1989年以降の中国における現代アートを展示するもので、冷戦終結後の地政学的なダイナミクスや、国際化の広がり、中国が台頭してきた時代のコンセプショナルで、実験的なアートを紹介する。70のアーティストたちによる150点の作品を展示する予定。

問題視されたアートは

今回取り下げを決定した作品は次の3点。
「Dogs That Cannot Touch Each Other」 (2003)
「Theater of the World」 (1993)
「A Case Study of Transference」 (1994)

「Dogs That Cannot Touch Each Other」は、闘犬のピットブルが、離れた状態で向かい合い、傾いたペットランナーの上で、戦おうとして走り続ける様子を撮影した7分の動画作品。アーティストのスン・ユエン(Sun Yuan,孫原)とペン・ユー(Peng Yu,彭禹)が、2003年に北京で製作した作品。

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「Theater of the World」は、コオロギや、トカゲ、カブトムシなどの昆虫や、ヘビなどの爬虫類が、オーバーヒートした空間の中で、生き残りをかけて、捕食しあう様子を観客が見るもの。中国出身で、パリ在住の著名な現代美術家、ホワン・ヨンピン氏(Huang Yong Ping,黄永砅)による1993年の作品。今回の特別展における、メイン作品となっていた。

「A Case Study of Transference」は、観客の前で二匹の豚の交合する様子を撮影したビデオインスタレーション。

同美術館によると、これらの作品は、既にアジアやヨーロッパ、米国のミュージアムで展示されたものだという。

本特別展の開催にあたり、ASPCAや、PETAなどの動物保護団体や活動家、コメディアンで俳優のリッキー・ジャーヴェィス(Ricky Gervais)らは、動物虐待だとして、グッゲンハイム美術館に公開状を送るなど、非難を行ってきた。

また、オンラインで署名を募るChange.orgでは、作品を取り下げるよう嘆願が募られており、その数は72.4万人に達している(9月27日現在)。

週末に美術館前で、抗議のマーチを行ったり、スタッフに直接コンタクトしたりする人もいたようだ。

一転して作品の展示中止へ

9月21日の時点では、グッゲンハイム美術館は、「Dogs〜」は、闘犬同士が戦うライブイベントではなく、2003年に製作された動画作品で、「実験的で挑発的な作品」であり、「怒らせるとの認識しているが、なぜアーティストがそれを製作したのか、国際化の社会的状況や、世界の複雑な性質について、鑑賞した人が考える機会となることを願っている。」とし、作品は取り下げない方針を発表していた。

同美術館が行った投稿に対して、多くの非難コメントが寄せられている。
(要旨)美術館は自分たちを正当化しようとしている。金を稼ぐビジネスのためにやってるのよ。パワーとコントロールについての作品ではなく、動物虐待。彼らが取り下げるまで、ボイコットすべき。

いつから美術館は、動物の虐待を展示する場所になったの?アートなんかじゃなく、金儲けのための虐待よ。

そのわずか4日後に、同美術館は前回の声明を撤回し、3作品の展示中止の決定を下した。

中国の著名な現代美術家、アイ・ウェイウェイ氏(Ai Weiwei,艾 未未)は、今回の決定に関して、「芸術機関が、言論の自由を表現するための権利を行使できないのは、現在社会の悲劇だ。」とし、「美術館に作品を取り下げろと圧力をかけるのは、動物だけではなく、人権についても狭い理解を示すことにもなりかねない。」とNYタイムズの取材に回答している。

グッゲンハイム美術館は、「度重なる暴力的な脅しにより、今回の決定がなされたことを遺憾に思う。」とし、「多様な声を表現することをコミットしている芸術機関として、作品を取り下げねばならないことに落胆している。表現の自由は、今までも、そしてこれからも、同美術館における最も重要なバリューとしていく所存です。」と述べている。