米軍「スパイ行為なかった」中国の気球騒動

64

ドーク氏はその後、地元新聞社ビリングズ・ガゼットに写真を持ち込んだ。ドーク氏は、取材依頼を受けた各メディアに無償で写真を提供。CBSのインタビューで、気球は「国家安全保障上の問題で、全国民が知る必要があると感じた」と理由を語っている。

この翌日、NBCニュースが「中国の偵察気球」が米国上空を飛行しており、バイデン大統領が撃墜を検討していると報じた

しかしオースティン国防長官はこの時点で、ミリー氏や北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)の高官をはじめとする軍や、国防省の幹部らと協議した結果、破片などが飛散し地上の人々の安全や安心に危険をもたらす可能性があるとして、運動性の兵器による破壊は推奨しないと判断。軍事的・物理的脅威はないとし、NORADらが追跡、監視にあたる姿勢を示していた。

これに対し、共和党からはバイデン政権の対応を非難する声が上がった。

トランプ前大統領は「中国は私をリスペクトしており、自分が大統領だったら、こんなことは起こり得ない」と主張。マージョリー・テイラー・グリーン下院議員(ジョージア州 )らも「直ちに撃ち落とすべきだ」と政権批判を展開した。

Advertisement

中国側は当時、気球は自国のものだと認めた上で、気象などを研究する民間飛行船と説明。なんらかの理由で、米国に迷い込んだと発表していた。

一方の米国は、「偵察用」だと主張を曲げず、ブリンケン国務長官は「許容できず、無責任だ」と非難。「主権の侵害」だとして、この騒動の期間中に予定していた訪中を延期するなど、外交問題に発展した。

バイデン大統領は5月、「貨物車2台分に相当するスパイ機器を積んだ愚かな気球は、撃墜された」と振り返り、それ以降「両国の対話という点においては、全てが変わってしまった」と中国を改めて非難した。

CBSニュースは一連のバルーン騒動について、バイデン政権における「最も奇妙な危機」と評している。

▼全米を揺るがせた「スパイバルーン」騒動

1
2