「私をリスペクトしてたから」トランプ氏 中国の偵察気球3度説を否定

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米国防総省は4日、サウスカロライナ州沖の領空で撃墜した中国の偵察気球をめぐる会見で、トランプ前政権時代にも米領空で中国の気球を3度確認していたと明かした。当時の国防長官には知らされていなかったという。

国防総省の高官は会見で、今回のような中国の偵察気球が「前政権時代に少なくとも3度、現政権でも過去に1度、偵察気球を確認したことがあった」と言明。ただ、今回のように長時間にわたって米上空にとどまることはなかったため、撃墜命令も出されなかったという。

トランプ政権下の2019年7月から1年4カ月にわたり国防長官を務めたマーク・エスパー氏は5日のCNNの取材で、この発表内容は初耳だったとコメント。「米領空に中国の偵察気球が現れたなどと、私のオフィスに誰かが知らせに来たことも、報告書を読んだことも記憶にない。もしあれば、確実に覚えているはずだ」とし、報告が一切なかったことへの驚きを露わにした。

今回の偵察気球は先月28日にアラスカ州上空で発見され、カナダ上空を通過したあと再び米本土上空に入り、今月2日までに核ミサイルを配備した空軍施設があるモンタナ州上空に移動した。4日午後2時半過ぎ、サウスカロライナ州マートルビーチ沖上空に移動したところで、米軍の戦闘機F22が気球を撃墜した。

バイデン大統領には発見当初に知らされていたが、本土上空では気球の残骸が危険をもたらす恐れがあるため、海洋上に移動するまで撃墜を待つよう命じていたという。

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国防総省の発表に、共和党議員らとともに自身のSNSで政権批判を連投していたトランプ氏は、批判を交わすための虚偽だと反論。「彼らは選挙の不正と偽情報だけがお得意だ」と、いつもの投票不正説を交えつつ、「今度は、のろまなバイデンの失態を和らげるためにトランプ政権でも中国が気球を飛ばしたなどとと並べ立てている。中国はTRUMPをリスペクトしすぎていて、こんなこと決して起きなかった」と主張した。

共和党の議員の間では、直ちに撃墜すべきだったなど、対応の遅れを非難する声が相次いでいる。

トランプ派のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員は4日、ツイッターで「たった今、我らがグレイト・アメリカの初代大統領、トランプ氏と話した。自分なら、米本土や米軍基地、その他の米領の上空に中国の偵察気球の侵入させるなど決して許さない、と言っていた。トランプ氏なら米領域に入る前に撃墜していた。私でもそうする」と、政権の対応を批判した。

バイデン氏やハリス副大統領の進退に言及する声もある。

サウスカロライナ州選出のジョー・ウィルソン下院議員は、「アラスカの住民や私の地元サウスカロライナ州のコミュニティーを危険にさらした。バイデン大統領とハリス副大統領は辞任すべきだということを証明するものだ」と主張。「政党に関わらず、資質はリーダーとして最初の条件だ。残念だがバイデン氏にもハリス氏にもそれがない」と2人の辞任を求めた。

共和党の保守強硬派、ジョシュ・ホーリー上院議員も気球にまつわる騒動を「国家の安全にかかわる脅威」とし、国土安全委員会は直ちに公聴会を開きバイデン氏に説明を求めるべきだと訴えた。

大統領選出馬の可能性も噂されるサウスカロライナ州選出のティム・スコット上院議員は、気球の侵入を中国に許したのは「脆弱なリーダーシップの現れ」と指摘。「弱さが侵略者を誘惑する。強さが彼らを止める」と述べた。テネシー州選出のマーシャ・ブラックバーン上院議員は、気球に関する報道が出た後に撃墜した点に疑問を呈し、公表されていなければそもそも撃墜もしなかったのではないかと指摘した。

こちらも次期大統領選への出馬がささやかれるマイク・ペンス前副大統領は、3日の時点でツイッターに「中国の偵察気球を撃ち落とせ」と投稿していた。さらに、予定されていたブリンケン国務長官の訪中が延期されたことを念頭に「来週にも国務長官を派遣すべきだ。彼らと目を合わせ、二度とやるなと伝えるべきだ」と、中国側に直接抗議するよう呼びかけた。