トランプポピュリズムで政治ダイナミクスに異変、米世論調査 激戦5州でバイデン氏をリード

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ニューヨークタイムズが実施した最新の世論調査によると、選挙の行方を左右するとされる6つの激戦州のうち5州で、トランプ前大統領がバイデン大統領をリードしていることがわかった。2020年の大統領選では、バイデン氏が6州すべてを制している。

調査は4月28日から5月9日にかけて、アリゾナ、ジョージア、ミシガン、ネバダ、ペンシルべニア、ウィスコンシンの有権者に実施。約4,000人から回答を得たとしている。

バイデン氏がリードしたのは唯一ウィスコンシン州で、バイデン氏47%に対して、トランプ氏の支持率は45%となった。ジョージア(39% – 49%)とネバダ(38% – 50%)ではトランプ氏が10ポイント以上の差をつけた。アリゾナ(42% – 49%)とミシガン(42% – 49%)では両者の差は7ポイント、ペンシルベニア(44% – 47%)ではトランプ氏が3ポイント上回った。

タイムズは調査結果について、人工妊娠中絶の問題がトランプ氏にとっての最大の弱点とする一方で、バイデン氏にとっては、社会の変革を切望する人々からの支持の弱さがそれよりも大きな課題になるだろうと予想を示した。

社会システムに関する質問で、激戦州の69%が「重大な変更」または「完全な解体」が必要だと答えた。

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こうした根本的な変革に対する期待はトランプ氏が圧倒的に高く、バイデン氏が変革をするだろうと答えた割合は24%だったのに対して、トランプ氏については70%が、重大な変更(45%)または完全な解体(25%)をするだろうと回答した。

従来、反体制の有権者は、保守層の支持が厚い共和党よりも民主党支持者というのがお決まりだったが、タイムズは、「反体制的なポピュリズム保守主義が政治ダイナミクスを逆転させた」と指摘している。

トランプ氏はこれまで弱いとされてきた若者や有色人種の支持を伸ばしている。18歳から29歳とヒスパニックの有権者では、トランプ氏はバイデン氏と「基本的に同等」の支持を獲得。黒人有権者の支持を20%に伸ばし、1964年の公民権法制定以来どの共和党大統領よりも高い水準に達した。

一方、バイデン氏は、社会制度の変更を要求する傾向が低く、民主主義を最重要の争点と主張する可能性の高い高齢者や白人の有権者の支持を維持しており、結果として激戦州の中でも北部に位置し、比較的白人人口の多いミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシンで競争力をキープしている。

なお、現在マンハッタンで継続中のトランプ氏の「口止め料」裁判については、裁判に大いに注目していると答えた有権者は29%にとどまるなど、現時点ではトランプ氏にとって重大なダメージとなる兆候は少ないとみられる。

ただしタイムズは、同時期の世論調査は歴史的に選挙結果を示すものではないとも指摘。若者や有権者のトランプ支持は確固たる基盤に基づくものではなく、政治に関心の薄い変則的な人々に集中していることから、選挙戦が本格化するにつれて容易に変わる可能性があり、バイデン氏の評価が上がる余地はあるとしている。