極右活動家の米国人義勇兵、キエフ行き命じられ逃走?

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「みんな来るのをやめべきだ。これは罠だ」

オハイオ州からウクライナに渡り、外国人義勇兵に加わったヘンリ・へフト氏(Henry Hoeft、28)は、SNSに投稿した動画で、自身の体験を告白した。

ニューヨークマガジンによると、元陸軍兵士のへフト氏は今月初頭、家族を残してウクライナに向かった。出発前、地元メディアに「戦争が明日にでもなくなることを願っている」「戦争が続く限り、そこ(ウクライナ)にとどまるつもりだ」と語っていた。

ヘフト氏はブーガルー運動のメンバーだという。ブーガルーは、2019年にオンラインから始まった極右の過激派運動で、反政府や反権力、反警察を唱えている。2020年のジョージ・フロイド殺害事件をきっかけに全国に拡大したブラック・ライブズ・マター運動の抗議集会に、アロハシャツを着たメンバーらがライフル銃をもって現れるなどして、話題になった。ブーガルーは「未来の南北戦争」を指すスラングだという。

ヘフト氏がブーガルーの知り合いの、マイク・ダン氏と一緒にポーランド国境を超えたのは3月9日。現地でジョージアナショナル隊に加わった。

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インサイダーによると、ジョージアナショナル隊が結成されたのは2014年。ウクライナのドンバス地域で親ロシアの反乱軍と戦うため、Mamuka Mamulashvili氏がジョージア国籍のグループとともに結成した。その後、ウクライナ政府と、ウクライナ軍の一部になる契約を交わした。諸外国からの義勇兵を歓迎しており、ウクライナ軍における事実上の外国人部隊になっているという。

戦争終結まで戦い抜く意志を示したヘフト氏だが、合流から1週間と経たない15日の投稿で、現地の混乱した状況を語り、すでに離脱したことを明らかにした。

ヘフト氏は、基地が攻撃を受け、多くの米国人や英国人が死亡したと説明。その後、自身の部隊がキエフに行くよう要請されたが、武器や装備が与えられなかったことから、全員が、これを拒否したと明かした。部隊には「たくさんのアメリカ人、カナダ人、英国人」がいたという。

すると、立ち去るように命じられ、さもなくば後ろから撃つと脅されたという。ヘフト氏は「イギリス人ともう1人のアメリカ人と一緒に、救急車の後ろに隠れて、脱出した」と説明。さらに、国外に出る外国人兵士が、国境のウクライナ兵らによって装備を置いていくよう命じられ、時には、パスポートを破られ、前線に戻るよう命じられたケースを耳にしたことから、人道支援スタッフに扮して、国境を超えたと語った。

ヘフト氏は「人々はここに来るのをやめなければならない。これは罠だ」と結論づけ、「彼らは、君たちを去らせてくれない」と主張。「去るのに最善の方法は、車か何かだ」などと助言した。

ヘフト氏の動画の撮影場所は明らかにされていないが、ニューヨークマガジンは、ポーランドだと伝えている。

デイリーメールによると、ヘフト氏の投稿に、複数の隊員から反論の声が上がっているという。

ある隊員は、ヘフト氏の話は「完全な間違い」と指摘。ヘフト氏は身元調査にひっかかっただけと述べた。基地が攻撃を受け、多数の死者を出したという主張については、攻撃されたのは30km離れた地点で、「私まだ生きているし、一緒にいた多数のイギリス人とアメリカ人もそうだ」と反論した。

なお、米国務省は、市民にウクライナへの渡航を中止するよう勧告している。ヘフト氏は渡航前、テレグラムに現地に行く意向を投稿したところ、FBIから忠告を受けたという。