「ノルドストリーム」パイプライン損傷、FOX司会がバイデン政権の関与を示唆

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ロシアとドイツをつなぐ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」がガス漏れを起こした問題で、ヨーロッパ指導者やEU、NATO高官が破壊工作または意図的に損傷された可能性を示す中、FOXニュースの司会、タッカー・カールソン氏は自身の番組で、事故と米政府の関連を示唆。物議を醸した。

ガス漏れは27日、スウェーデンとデンマークの海域で、ノルドストリーム1の2カ所、ノルドストリーム2の1カ所で確認された。

EUのジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表(外相)は28日、27カ国メンバーを代表した声明で、「深く懸念」しているとした上で、「入手可能なすべての情報は、意図的な行為によるものであることを示している」とした。

NATOのストルテンベルグ事務総長はツイッターの投稿で「デンマークのボズコフ国防相と破壊工作について話し合った」と述べ、「NATO諸国の重要なインフラの保護に言及した」と明かした。

カールソン氏は27日の自身の番組で、「もしあなたがプーチンなら、自分のパイプラインを爆破する自暴自棄な大バカ者にならなければならない。それだけは絶対にやらないことだ」と話し、「天然ガスは権力と富、何よりも重要なのは、他国に対するレバレッジだからだ」と説明。「ヨーロッパは、冬を前にエネルギーを今まで以上に必要としている。君がエネルギーを供給しないならば、ドイツのような国々は、君が欲するものに目もくれないだろう」と続けた。

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なお両パイプラインとも現在ヨーロッパへの供給を止めており、漏れ出したのは、残りのガスと見られている。

さらにカールソン氏は「ノルドストリームを爆破することは、プーチンにとって何の助けにもならない。彼はやらないだろう。だからといって、他の国が考えないということではない」と、ロシア以外の可能性を示唆した上で、バイデン氏が2月に行なった記者会見の一幕を放送した。

バイデン氏はこの中で「ロシアが侵略すれば、つまり戦車や兵士らがウクライナの国境を越えるということだが、その時はノルドストリーム2はなしだ。われわれはそれを終わらせる」と明言。記者から、ドイツの計画を米国が変更できるのかと問われると「約束しよう。われわれはそれができる」と曖昧に答えた。

カールソン氏は加えて、ヌーランド米国務次官が1月の記者会見で「ロシアがウクライナに侵攻した場合、いずれにせよノルドストリームの前進はない」と話す映像も紹介。「8ヶ月が経った今、振り返ると、これらの発言には身が凍る思いだ」と話し、「バイデン政権がこのようなことをしたのか、問わなければならない。確かなことはわからない」と語った。

このほか、ポーランド元外相で欧州議会で対米関係を担当するシコルスキ議員が、27日のツイートで、ガス漏れの海面の画像とともに「ありがとう。USA」とコメントしたことにも言及。「おそらく偶然ではないが、本日、新たなパイプラインが開通したことにも触れなければならない。ロシア以外の天然ガスをほぼ同じ地域で運ぶパイプラインだ。バルトパイプと呼ばれ、ポーランドが開通した」と語った。

ワシントンポスト紙によると、ロシア大統領府のペスコフ報道官は28日の記者会見で、ロシアによる破壊工作説を「予想通り愚かだ」と一蹴。カールソン氏の放送を知ってか知らでか、バイデン氏の2月の発言「ノルドストリーム2はなしだ」を指し、事件と米国との関連をほのめかした。

カールソン氏の番組はケーブルニュース番組で最高の視聴数を記録しており、昨年の1回あたりの平均視聴者数は310万人と報じられている。

一方、ロシアよりの発言が批判を受けることが多々あり、2月に放送した番組内でロシアの侵攻を正当化する発言をしたとして、カールソン氏の影響力を懸念する議員らから非難する声が相次いだ。今年3月、米メディアのマザージョーンズは独自に入手した資料をもとに、ロシア政府が体制派のメディアに宛てたメモで、カールソン氏の映像を「可能な限り」使用するよう指示したと報じている。