ロシアが米テレビ人気司会者に「大注目」のワケ

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今月初頭、ロシア政府は、体制派のメディアに宛てたメモで、FOXニュースの人気No.1司会者タッカー・カールソン(Tucker Carlson)氏の映像を「可能な限り」使用するよう指示したという。マザー・ジョーンズが報じた。

カールソン氏の番組「タッカー・カールソン・トゥナイト」はケーブルニュース番組で最高の視聴数を記録しており、昨年の1回あたりの平均視聴者数は310万人と報じられている

同サイトは、資料はロシアの政府機関「情報通信サポート局」が作成したもので、ロシア国内の全国メディアに寄稿する人物から入手したと説明。身元は本人の希望により、明かさないとしている。

資料は12ページにおよび、冒頭では、各メディアに拡散を推奨するものとして、「(ウクライナへの侵攻は)ロシア領土における核攻撃の可能性を排除するため」「ウクライナはナショナリズムの歴史がある」「ロシアの軍事作戦は計画通りに進行している」「プーチンはすべてのロシア人を守ろうとしている」「敗北が続いているウクライナ軍は、ロシアが支配するウクライナ東部の住宅地を攻撃している」といった内容が記されているという。

カールソン氏については「情報戦の勝利」と称したパートで、「米国とNATOが紛争に果たしたネガティブな役割、西側諸国とNATOによる、ロシア連邦とプーチン大統領に対する挑発的な振る舞いを鋭く批判している」と評し、「人気のFOXニュースホストのタッカー・カールソンのクリップを可能な限り、使用することが重要だ」と記しているという。

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カールソン氏に関する指摘は10日に発行された「報道の推奨事項」にもあるという。バイデン政権のロシア産原油の禁止措置について「罰を受けるのはウラジミール・プーチンだが、実際のところは米国市民だ」と批判した発言が挙げられ、「ウクライナを守るという名のもとで、アメリカ人は切り詰めることを推奨されている」といった報道と合わせることで、反制裁の主張を強化することができる、と助言が添えられているという。

さらに「インフレに拍車をかけているのはロシアへの経済制裁ではなく、バイデン政権の粗野な支出のせい」としたニューヨークポスト紙の記事にも触れているという。

同資料ではまた、ロシア政府が以前から主張する生物兵器疑惑に焦点を充てており、メディアが発信するメッセージに関して「ウクライナの領土で米国が加わっている軍事生物学研究所の活動は、ロシアとヨーロッパの脅威をもたらしている」という点に注意するべきとし、さらに「米国が東スラブ人の”生物虐殺”を行おうとしている」と主張するよう推奨しているという。

国内から非難

ディック・ダービン上院院内幹事(民主党 イリノイ)は14日の議会演説で、ロシアは「可能な限り最悪の戦争犯罪」に問われるべきと厳しく非難した上で、カールソン氏を名指しして「プーチンの言い訳をしている」と指摘。「ロシアでさえ、そのお友達メディアに傾聴するよう推奨している」と述べ「恥ずべきだ」と批判した。

カールソン氏は、ロシアが侵攻を開始する直前の22日の放送では、「プーチンが中流階級の仕事をロシアに連れ去ったか?あなた方の仕事を破壊した世界的なパンデミックを作り出したか?子供に人種差別を受け入れるよう教えているか?フェンタニルを作っているか」と問いかけ、「答えはノーだ」と発言。「なぜプーチンを憎悪するのか」とロシアを擁護すると、共和党からも批判の声が飛んだ。

アダム・キンジンガー議員は「彼はプーチンは敵ではないと述べている。危険を超えている」と非難。ジョー・ウォルシュ元下院議員は「視聴者に民主党と政府が悪くて、プーチン氏は良いと告げている。何百万人ものアメリカ人が彼に同意してしまうから危険だ」とツイートした。

インターセプトのロバート・マッケイ氏は、24日の記事で上記のセグメントをはじめ、複数のクリップがロシアのメディアで放送されたと指摘している。

9日の放送では、前日の議会公聴会における国務省のビクトリア・ヌーランド(Victoria Nuland)次官のウクライナにある生物学研究施設に関する証言を取り上げ、研究施設で生物兵器の研究が行われている証拠と示唆。

さらに「ウクライナ担当のバイデン政権高官が、認めた」「嘘で陰謀論、信じるには狂っており不道徳だと伝えられてきたロシアの偽情報は、完全なる真実であることを認めた」と述べるなどしたことから、事実誤認で、ロシアのプロパガンダをそのまま繰り返しているとの非難の声が上がった。