デパートレイプ裁判、トランプ氏が一転 DNAの提出応じる意向

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約30年前に性的暴行を受けたとする女性作家とトランプ前大統領との間で争われている訴訟で、トランプ氏側はこれまでの態度を一転。DNAサンプルを提出する意向を示した。

原告のジーン・キャロル氏は2019年に発表した著書で、1990年代半ばにニューヨーク市内のデパートでトランプ氏から性的暴行を受けたと告発。これに対しトランプ氏がキャロルさんを嘘つき呼ばわりしたため、名誉棄損でトランプ氏を提訴した。2020年2月、原告側が証拠としてトランプ氏のDNAサンプルを提出するよう求めたが、トランプ氏側は拒否していた。

被告側代理人として新たにトランプ氏の弁護団に加わったジョゼフ・タコピナ氏は、10日に裁判所に提出した資料で「トランプ氏は、(原告・キャロル氏の)ドレスに付着したDNAと照合することを目的に、DNAサンプルを提出する意思がある」と説明。ただしその条件として、「(原告側の)DNA報告書の中で抜けているページを速やかに提出する」ことを挙げた。

ニューヨークタイムズによると、キャロル氏側がトランプ氏にDNAサンプルの提出を求めた資料には、本人のDNAと、問題の日に着用していたとするドレスと靴の検査結果を詳細に記した報告書が添付されていた。

タコピナ氏は今回の申し立ての中で、弁護団はこの前日に、資料の25ページから37ページが欠けていることに気がつき、キャロル氏側にメールで提供するよう求めたところ、拒否されたと明かした。

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拒否理由について、キャロル氏の代理人は、訴訟における事実開示(Fact Discovery)の段階はすでに完了しているほか、報告書に欠けているページは、証言を行わない専門家が作成したもので、開示対象ではないなど、複数の点を挙げたという。

タコピナ氏は、キャロル氏側は今年2月に入り895ページにおよぶ証拠資料を提出しているとしたほか、作成者の立場に関わらず、報告書をトランプ氏にDNAの開示を求める焦点に据えたと指摘。さらに、キャロル氏の過去のツイートに言及し、キャロル氏はトランプ氏のDNAがドレスに付着していると公言しているとした上で、原告の専門家は、単なる相談のためでははなく、原告がトランプ氏に対するDNAの証拠を持っていることを法廷提出書類で公言するために雇われたと反論した。

キャロル氏は2021年に投稿したツイートで「マンハッタンの地区検事、サイラス・バンスはトランプの納税記録、ジョージア州検察のファニ・ウィリスはトランプの通話記録、メアリー・トランプ氏は祖父の遺言、そして私はドレスという証拠がある。トランプは基本的に最低最悪」と投稿していた。

原告側代理人のロベルタ・カプラン氏は、トランプ氏が一転して提出に応じたことについて「裁判を遅らせるための浅はかな作戦」で、4月に招集される陪審員を汚そうとしていると非難した。

なお、キャロル氏はこの訴訟に加え、昨年11月にも新たな訴訟を提起。二つ目の訴訟には、ニューヨーク州の法改正で、成人の性的暴行については時効成立後でも訴訟を起こせる猶予期間が設けられたことから、名誉毀損に加えて性的暴行に対する賠償請求が含まれている。