潜水艇「タイタン」事故 コスト削減策が悲劇招いた可能性

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5人の命を奪った潜水艇「タイタン」の事故原因について、米紙ニューヨークタイムズは、オーシャンゲート社が採用したコスト削減策が複合的に作用した可能性を指摘した。

2021年に沈没船「タイタニック号」探索ツアーを成功させた同社は、25万ドルの高額で参加者を募る一方、今シーズンはコストをさらに削減するために、より安価で古い母船をレンタルしていた。

同社が借りたポーラー・プリンス号は、タイタンを搭載するには小さすぎるため、浮揚装置に載せたタイタンをニューファンドランド島から3日間かけて潜航地点まで牽引した。

今年5月にタイタンに乗船したトラベル・ウィークリーの編集長、アーニー・ウェイスマン氏は同紙の取材に、ポーラー号に繋がれた潜水艇と土台は「やや荒々しく振り回されていた」と振り返っている。

なお米海軍の保有する潜水艇「アルビン号」は、特注のウィンチなどを備えた専用の母船に搭載、運搬し、潜航地点で大型のクレーンを使って海中に投下される。こうした支援船と潜水艇の組み合わせは高価で、最近では一組5,000万ドルで売りに出された例もある。

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このほか、繰り返し報じられているように、タイタンの船体にはチタンではなく、より安価なカーボン・ファイバーが使われていた。

チタンは圧縮と張力の両方に強い耐性があるが、カーボン・ファイバーは圧縮よりも引っ張る力に対してより効果的で、押されたり圧縮されたりすると、崩壊または座屈することがあるという。金属や炭素繊維の機械的試験や故障解析の専門家、ティム・フォッケ氏は、長時間の潜航中に遭遇する主な力は圧縮で、タイタンの構造に「非常に驚いた」と語った。

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