米連邦最高裁 トランプ政権の国境の壁建設 国防費の転用を承認

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連邦最高裁は26日、訴訟が継続する間、国防費の一部(25億ドル)をアリゾナ州、カリフォルニア州、ニューメキシコ州の国境沿いの壁建設費用に転用するトランプ政権の計画を進めることを認めた。

国防費の転用を巡っては、環境保護団体らが訴えを起こし、カリフォルニア州の連邦地裁が差しどめ判決を下していた。その後、トランプ政権は上級審の審理の間、下級審の判決の停止を求めたが、控訴裁判所によって却下された。

NYタイムズによると、最高裁の裁定は、原告側に政府を訴える法的権利がないことが理由で、転用の是非に関するものではない。

リベラル派の判事4人は反対に回った。中でもスティーブン・ブライヤー判事は、政府に準備を進めることを認めたものの、政府が最終的に敗訴した場合に取り戻しが難しいことから、建設は認められないとしている。

最高裁の判断を受け、トランプ大統領はツイッターで「ワオ!壁に大きな勝利だ。連邦最高裁は下級審の差しどめを覆し、南部国境の壁を進めることを許可した。国境の安全と法による支配の勝利である!」と語った。

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トランプ政権は昨年、57億ドルの壁建設費用の予算を求めて議会と対立し、政府閉鎖に踏み切った。その後、過去最長の35日間におよぶ閉鎖の末、1月25日に民主党と交渉を継続することを条件に、政府を再開した。

しかし、民主党との溝は埋まらず、2月15日に国家非常事態を宣言し、当初の要求額よりも多い80億ドルを複数の財源から振り向けることを発表。議会が承認した14億ドルのほか、財務省の麻薬の押収による基金(6億ドル)、国防総省の麻薬防止予算(25億ドル)、軍事建設予算(36億ドル)から捻出するとしていた。

連邦最高裁の審理に際し、ノエル・フランシスコ訟務長官(Noel Francisco)は「ハイキングやバードウォッチング、フィッシング」などの原告の利害は「南部国境から違法薬物の流入を防ぐためのバリアを建設するという政府の取り組みを阻止することで発生する公衆の害を上回るものではない」と主張した。

環境保護団体の訴えは国防費の25億ドルを巡るものだが、カリフォルニア州など複数州は、国家非常事態宣言によって軍事建設予算などから国境の壁建設費用を確保しようという政権の決定は憲法違反にあたるとして、2月に訴訟に踏み切っている。