「地球最後の日の飛行機」とは?イギリス海峡を通過

3474

ロシア軍によるウクライナへの侵攻が続く中、米空軍のE-4Bナイトウォッチが、イギリス海峡上空を通過するのが確認された。英紙エクスプレスが伝えた。

E-4Bはボーイング747を元に改造を加えた飛行機で、核戦争の際に軍事作戦を遂行する空中基地として使用することを目的として、70年代に開発されたという。複数日間にわたって飛行が可能で、核爆発による電磁パルスに耐えられるよう設計されている。「Doomsday Plane(地球最後の日の飛行機)」や「空飛ぶペンタゴン」とも呼ばばれる。

同紙によると、首都ワシントンを飛び立ち、大西洋とイギリス海峡を越え、現在ケンブリッジ北部のあたりを周回している。目的地はミルデンホール空軍基地とみられるという。

戦争が長期化するなか、ロシアが核兵器を使用する可能性に懸念が高まっている。

ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は22日、CNNのインタビューに、国家が存亡の危機に立たされれば、使用もありうると話した。

Advertisement

プーチン氏は先月27日、国防省とロシア軍の総帥らに対し、核戦力を含む軍の核抑止部隊を戦闘の特別態勢に移すよう指示している。

空飛ぶペンタゴン

ビジネスインサイダーによると、E-4Bの仕様に関しては、ほとんどが国家機密であり、明らかにされていることは少ない。

核爆発が起きた際に、大統領、防衛長官、統合参謀本部長官が乗り込み、機内から攻撃を含めたあらゆる指令を発することを想定している。搭乗デッキは3つ、乗組員は最大112人。

燃料補給なしで最大12時間の飛行が可能だが、空中補給ができるため、理論的には数日間飛び続けることができる。1時間あたりの運行コストは159,529ドル(約1,900万円)で、エアフォースの中では最も高額とされる。

内側は、戦時に最適化するよう設計されている。先頭の1・2階は軍高官専用のスペースで、この2階部分の裏には24時間体制で任務につく空軍隊員のための18床のベッドが備えられている。真下には、大統領らが指令を発するための会議室がある。この背後にあるブリーフィングルームでは、メディアが待機し、最新情報を受け取る。機体中央はバトルスタッフルームと呼ばれ、各局の将校らが乗り込み、戦略を立案する。機体後部にある通信ルームでは、オペレーターが世界中と連絡を取り合う。通信機器は最新技術のものから古いものまで揃え、いかなる状況にも対応する。

機体の上部にある「Ray Dome」と呼ばれる突起部分には、67基の衛星放送受信アンテナが設置されている。これによって、飛行機の後方約8キロ範囲を海中走行する潜水艦ともコミュニケーションが可能なのだという。

機体の窓は操縦席のみで、核放射線から保護するための網が設置されている。機内の各設備も電磁パルスから守られよう設計されている。機体は断熱および核シールドで覆われ、直接火災の対応策も施されている。機内の計器はデジタルではなく、意図的にアナログ機器が採用されているのだという。

E-4Bは冷戦下の1973年、核戦争に備えて開発された。平時は国防長官の外遊機として使用されているほか、大統領の海外渡航の際には、一機がエアフォースワンに随伴することになっている。