米シンクタンクが台湾有事の米中衝突をシミュレーション、結果は?

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米首都ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)が実施する台湾有事の米中衝突を想定したシミュレーションによると、米軍は多大な損害を被るものの、台湾防衛に成功する可能性が示されているという。Business Insiderが伝えた。

この研究は、中国と台湾で起き得る事態を可視化したもの。中国と台湾の両者が現在の軍事力を有するという前提で、2026年に紛争が起きると想定した。シミュレーションは全22回行われる計画で、これまでに18回までを終えている。12月には最終報告が発表される予定。

CSISのマーク・カンシアン上級顧問はシミュレーションの途中経過について、台湾が侵略されることはないが、米側も大きな代償を払うことになると説明。Business Insiderの取材に、「今のところすべてのシミュレーションで自治国家としての台湾は存続するとの結果が出ている。米国と台湾は中国の侵略を阻止できると言っていい」とし、「だが非常に高い代償を伴う。何百もの戦闘機や航空母艦が失われ、台湾の経済は崩壊し、中国側の海軍や空軍も大きな被害を受ける」と説明した。英タイムズ紙によると、悪い事態を想定した場合のシナリオでは米空軍と海軍の所有機の半分にあたる900の戦闘機や爆撃機が4週間で破壊されるという。

一方でカンシアン氏は、米国は大きな被害をこうむるものの、中国側の動きは目につきやすいため「ほとんどのシナリオで中国の軍艦への被害の方がはるかに大きい」とし、中国は水陸両方から侵攻する間、100を超える軍艦を失うとも話した。

シミュレーションでは、台湾、日本、中国を含む太平洋西側の地図が描かれたボードを使い、地図上で駒を動かす。コンピューターモデルと戦闘結果の表を使い、歴史的経験の分析に基づき、考えられる結果を導き出す。さらに、予測できない事態が起きる要素も加えるため、サイコロを使う。そして次に、台湾だけの地図を使い、中国軍が上陸した場合の地上戦のシミュレーションに移る。

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最悪のシナリオについては、まだシミュレーションを終えていないが、米軍がウクライナ侵攻のような別の危機にも並行して対応する必要が生じ、かつ台湾が中国の情報操作や妨害を受け対応が遅れる、という状況を想定している。カンシアン氏は、さらに中国本土への空爆や、日本の役割も考慮に入れた、より悲観的な状況を想定したシミュレーションも計画中だと明かした。

CSISは中国を追い込むための米側の改善策として、長距離弾道ミサイルの増強、さらに戦闘機の多くは地上で破壊されることから、グアムや日本での戦闘機を保護するシェルターの建設の必要性を挙げた。

台湾をめぐり、近年米国と中国の間では緊張が高まっている。軍事アナリストの中には中国がいずれ台湾を侵攻すると考える人も少なくない。中国は台湾を独立国家として認めないよう各国政府に圧力をかけており、10日に発表した台湾統一に関する白書では、平和統一の方針を維持しつつ、武力行使についても放棄しない姿勢を明確にした。

米国はこれまで台湾を支援しつつ中国との正面衝突を避けるというデリケートなバランスを保ってきたが、今月初め、中国の事前の警告にも関わらずペロシ米下院議長が台北を訪問したことで、より一層緊張を高めた。

ペロシ氏の訪問後、中国は数日にわたり台湾近海で軍事演習を行い、今後も「訓練と戦闘準備」を続ける意向を示していると伝えられている。さらに14日には、民主党のエド・マーキー上院議員率いる米議会代表団が台湾を訪問しており、中国の意向に立て続けに反したことで、さらなる緊張の高まりが懸念されている。