ウクライナ空軍 ロシアミサイルの迎撃方法を説明

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ロシアの巡航ミサイル1発を迎撃するために、ウクライナ空軍は地対空ミサイル2発を発射しているという。

ウクラインスカヤ・プラウダによると、ウクライナ空軍の報道官ユリー・イーナット氏は21日にキーウで行ったブリーフィングで「通常、1つの空中標的に対して、対空ミサイル2発を発射している。破壊できる可能性が高まるからだ」と説明。「敵は、上空で最新のミサイルを発射している、Kh-101ミサイルは1年か2年前に製造されたものだ」とし、その証拠に「1970年に生産されたS-300やブーク対空ミサイルで撃ち落とした2019-2020年製のミサイルの破片を発見した」と話した。ただし、迎撃の最終決定は、地上の司令官に委ねられているとも強調した。

イーナット氏は話の中で、11月15日のロシアによる大規模爆撃にも言及したという。

ロシアはこの日、ウクライナ全域の都市やエネルギー施設に対して、侵攻開始以来最大となる96発のミサイル攻撃を実施した。西部にある首都キーウやリヴィウ、リヴネから北東部のハルキウ、中部クリヴィー・リフ、ポルタバ、南部オデーサ、ムィコラーイウといった都市が攻撃され、ウクライナのデニス・シュミハリ首相によると、エネルギーシステムのほぼ半数に被害が出た。米当局者は、ロシアがウクライナ全土で大規模なミサイル攻撃を続ける理由の一つに、ウクライナの防空システムを枯渇させる目的があるとの見方も示している。

イーナット氏によると15日は、ウクライナ西部だけでロシアのミサイル15発を撃墜した。先の主張に基づけば、迎撃弾30発を発射したことになる。

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この日は、ウクライナ国境から近いポーランドの村落にミサイルが着弾し、2名の死者が出た。

事件を受けて、G20でインドネシアを訪れていたバイデン大統領は、G7やNATO首脳を集めた緊急会合を招集。会合後、記者らに「軌道から見て、ミサイルがロシアから発射された可能性は少ない」と話した。ポーランドのドゥダ大統領は、自国政府の情報として、ミサイルは「古いロシア製のS-300で、ロシア側から発射された証拠はない」と説明。「ウクライナの対空防衛によって発射された可能性が高い」として、「不幸にもポーランド領土に落下した」と加えた。NATOのストルテンベルグ事務総長も初期の分析として、ウクライナ空軍により領土防衛のために発射された可能性があるとの見解を示した。

一方、ゼレンスキー大統領は「間違いなく、われわれのミサイルではなく、われわれのミサイル攻撃でもない」と否定。軍司令官から情報を受け取ったとして「彼らを信頼している」と話し、さらに、ウクライナが事故調査に参加するべきと主張した。

S-300はロシアとウクライナ両国が保有し、ギリシャやスロバキア、ブルガリアを含むNATO18カ国でも使用されている。

戦略国際問題研究所によると、S-300は、ロシア製の地対空ミサイルシステムで、巡航ミサイルや弾道ミサイルの迎撃、航空機やドローンとの交戦能力がある。これまで複数のバリエーションが開発されている。第一世代は、ソビエトが1967年に開発が開始された。1978年に実用化され、現在も実戦で使用されている。弾頭重量は133キログラムから143キログラムで、射程は最小25キロメートルから最大で150キロメートルだという。ロイター通信が、ロシアの兵器輸出企業ロスオボロンエクスポルト社の資料をもとに伝えたところでは、2010年代初期に実用化された最新型のS-300(Antey-2500)は、最大射程350キロメートルに達するという。

ポーランドに着弾したS-300がどのバージョンか明らかにされていない。

↓9月にウクライナ空軍司令部がFacebookに投稿した、ロシアの巡航ミサイルに対してS-300PTを発射する様子。