弾劾決議案の採決前日、トランプ氏 「民主主義への戦争」とペロシ下院議長を非難

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下院本会議での弾劾条項の採決を翌日に控え、トランプ大統領はナンシー・ペロシ議員宛に、弾劾に対する「最も強力な抗議を表現した」という長文の書簡を送った。

書簡でトランプ氏は、ペロシ氏が「無効な弾劾手続き」を進めているとし、「就任宣誓に違反し、憲法への忠誠を破った。アメリカの民主主義に対する戦争を宣言している」と非難。

弾劾の動機について「3年間を費やしてアメリカ市民の意思を覆し、投票を無効にしようと試みている。」「モラー報告書になにも見つからず、完全に失敗したから、次のでっち上げを決めたのだ」と批判した。

ウクライナ疑惑について、これまでツイッターや会見で繰り返してきた論点を並べ、改めて無実を主張。会話記録を公開したウクライナのゼレンスキー大統領との7月の電話協議について「潔白な会話」と述べ、会話中「お願いしたいことがある(do us a favoe)」と告げたのは、国としてのお願いで、個人的要求ではないとし、会話が曲げて伝えられたと指摘した。

さらにゼレンスキー大統領が、圧力がなかったと主張していることやソンドランド駐EU大使が公聴会で証言したトランプ氏との会話についても言及。ソンドランド氏は11月の情報委員会の公聴会で、トランプ氏にゼレンスキー氏に対して何を求めているか明確化を求めた際、トランプ氏が「何も求めていない」と回答したと証言した。同証言について、トランプ氏は交換条件はなかったとする主張の裏付けとして度々言及している。

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弾劾の正当性について「民主党議員による憲法違反の権力乱用」「弾劾条項はいかなる憲法論からも認められない」と攻撃。最初から憲法の基本となるデュープロセス(法による適正手続)を欠いているとし、「セイラム魔女裁判の被告人はもっとデュープロセスが与えられた」と批判した。

トランプ氏は文中、「アメリカの選挙に介入しているのはあなただ。アメリカ民主主義を転覆しようとしているのはあなただ。司法妨害をしているのはあなただ」と、言葉を変えながらペロシ氏への非難を繰り返した。

最後に「弾劾の幻想を直ちに終了し、市民のための仕事に戻る時」と弾劾の中止を訴える一方、「あなたがこれに応じる見込みはないことから、歴史的な目的のためにこの手紙をしたため、私の考えを永遠に消し去ることのできない記録に残す」と締めくくった。

ペロシ下院議長「ばかばかしい」

書簡について記者から聞かれたペロシ議長は「答えることはない。ばかばかしい」と一蹴。「要点についてわかったけど、本当に病んでいる」と述べた。

下院で弾劾条項が可決すると、トランプ氏は弾劾訴追を受ける史上3人目の大統領となる。