トランプ氏のコロナ入院からの「帰還劇」、お蔵入りしたベタな演出とは

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昨年の大統領選挙期間中、新型コロナウイルスに感染したトランプ氏。一時重症化し入院する事態となったが、当時の裏話をトランプ氏自らが、ジャーナリストに明かした。

エピソードは、ABCニュースのホワイトハウス担当記者、ジョナサン・カール氏の新著「Betrayal: The Final Act of the Trump Show(裏切り:トランプショーの最終幕)」で明かされている。16日の発売を前に、著書を入手したニュースサイトInsiderが報じた。

著書によると、今年3月のカール氏との対談でトランプ氏は、退院の瞬間をドラマチックに仕立てようと「ブロードウェイミュージカルさながら」の演出をしたと話した。

トランプ氏は、大統領選の投票日を数週間後に控えた昨年10月、新型コロナに感染し、一時ワシントン近郊のウォルター・リード米軍医療センターに入院した。

2日に入院し、5日に退院することになったが、この退院の日、ホワイトハウスに戻る時間を、細かく計算していたという。

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トランプ氏が、この日に病院を出たのは午後6時半頃。テレビの視聴者数の最も多いプライムタイムで、夕日が最も映える時間帯にホワイトハウスに到着するのを狙った時間だった。

計算は功を奏したようだ。

ドラマチックな帰還劇は速報で報じられ、米三大ネットワークの視聴数は、約2,400万世帯にのぼったという。

到着後の挙動も計算していた。普段、一階から最短距離で建物の中に入り、「必要以上に歩こうとしない」というトランプ氏だが、この日は呼吸器系疾患からの回復直後にも関わらず、南側の長い階段を歩いてのぼり、トルーマンバルコニーに立った。

トランプ氏はこの時、スーパーマンのTシャツを中に着て、バルコニーでYシャツを破るパフォーマンスを検討していたという。

最終的にこのアイデアは却下され、代わりにトランプ氏は約2分間、幾分しかめっ面で息苦しそうにバルコニーに立ち、親指を立ててあいさつをしてみせた。このとき、トランプ氏はデキサメタゾンという強力なステロイドで症状を抑えていたという。

カール氏はこれを「トランプ氏の大統領在任中、最も印象的な演出がなされたイベントかもしれない」と評している。

トランプ氏が、最初に検査で陽性になった正確な日時については、未だに分かっていない。当時の政権内部では、定期的な検査が行われていなかったのが主な理由だという。

感染する前、トランプ氏は新型コロナウイルスの脅威を軽んじるような発言を繰り返し、専門家の推奨事項を一笑に付したりしていた。この一方で、著名なジャーナリスト、ボブ・ウッドワード氏とのインタビューでは、ウイルスの脅威を認識しつつも、意図的に軽視したと明かしていた。

今年1月のトランプ氏の大統領退任までに、新型コロナウイルスで亡くなった米国人の数は40万人に及んだ。トランプ政権の新型コロナ対策チームでコーディネーターを務めたデボラ・バークス医師は、米議会下院の公聴会で、トランプ氏が専門家の意見に耳を傾け科学を尊重していれば、少なくとも13万人の命が救えた可能性があると証言している。