#MeTooのきっかけ描いた映画『シー・セッド』興収は期待外れに

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女性記者が、大物映画プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインの長年にわたるセクハラ疑惑を追求する社会派ドラマ映画「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」(She Said)が18日、米国の約2,000館で公開された。

ハリウッドを揺るがす大事件の映画化で、批評家からも高評価を得ているが、オープニングの興行成績はわずか220万ドル(約3.1億円)だった。製作費は3,000万ドルと伝えられている。

同作品は、ニューヨークタイムズの記者ミーガン・トゥーヒー氏とジョディ・カンター氏らによる2017年の調査報道の同名著書「She Said」を映画化したもの。2人は翌年、ピューリッツァー賞を受賞した。最初の報道以降、100人以上の女性が、ワインスタイン氏によるセクハラ被害を名乗り出た。

同氏は2020年2月、強姦罪や性的暴行罪など5件の罪で起訴された。マンハッタンの裁判所の陪審は、2件の性犯罪について有罪評決を下し、23年の禁固刑を言い渡した。現在もロサンゼルス郡で別の裁判が続いている。

映画では、ミーガン役をキャリー・マリガンが、ジョディ役をゾーイ・カザンが演じた。2015年にVarietyのインタビューで、ワインスタイン氏のセクハラを告発していた女優のアシュリー・ジャッドも本人役で登場する。監督はマリア・シュレイダー。

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©Universal Pictures

ワインスタイン氏は、「シー・セッド」の興行について、塀の中でほくそ笑んでいるという。

同氏の広報担当ジュダ・エンゲルマイヤー氏は、Varietyに声明を寄せ「失敗は驚くべきことではない」と語った。「ムービーウォッチャーはいま、楽しみたいと思っている。捜査に関する詳細や#MeTooムーブメント、ワインスタイン氏の告発者の話は、過去5年間で何度も語られてきたため、お金を支払って観るほどの価値はほとんどない」と成績不振の理由を推測。さらに「プロデューサーで、ディストリビューターでもあるハーベイは、そうなることを分かっていただろう」と皮肉なコメントを加えた。

©mashupNY

トランプ氏が大統領に就任した2017年は、「ウィメンズ・マーチ」など女性の権利保護や、白人史上主義に対する抗議など、あらゆる政治活動が活発化。ニューヨークでも毎週のように大規模なデモが行われていたが、現在その数は極端に減少した。

今年6月、ジョニー・デップと元妻で女優のアンバー・ハードの間で争われた名誉毀損の裁判で、陪審がデップの主張をほぼ全面的に認めたことで、ネットでは「#MeTooムーブメントの終わり」といった声も上がった。

この時ハードは、「声を上げた女性が公共で恥ずかしい思いをさせられたり、自尊心を傷つけられたりした時代に逆戻りする」「女性に対する暴力を真剣に捉えるという考えが後退した」と判決を非難している。