大物プロデューサー ハーヴェイ・ワインスタイン30年間セクハラ行為

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5日、ニューヨークタイムズは、ハリウッドで最も権力を持つ映画プロデューサーの1人、ハーヴェイ・ワインスタイン氏(Harvey Weinstein)が、女優や従業員、業界関係者に30年以上セクハラを行っていたと報じた。

ワインスタイン氏のセクハラ行為は、最初の設立した製作会社「ミラマックス」(Miramax)時代から、現在の「ザ・ワインスタイン・カンパニー」(The Weinstein Company、TWC)時代まで繰り返し行われていたという。
元従業員、現在の従業員、女優、モデルなど8人へのインタビューと、内部資料、電子メール、法的資料などの調査を元に記事したもので、セクハラ内容や場所などの詳細が書かれている。今までに、女優のローズ・マッゴーワン(Rose McGowan)さんを含む、少なくとも8人の女性に和解金が支払われている。

セクハラ内容は

NYTの記事によると、女優のアシュレイ・ジャッド(Ashley Judd)さんは、ペニンシュラ・ビバリー・ヒルズ・ホテル(the Peninsula Beverly Hills hotel)にビジネス・ブレックファーストミーティングをしようと呼び出されたが、案内されたのは、朝食の席ではなくホテルの部屋だったという。
部屋の中に、バスローブ姿のワインスタイン氏が現れ、彼女にマッサージを施すか、自分がシャワーを浴びるのを見るかと訪ねた。断られると、肩をさすろうか?など次々と高圧的な態度で要求をしてきたという。(アシュレイさんは、2015年に行われたバラエティ誌のインタビューで、ある映画界の大物よりセクハラを受けたと語っているが、名前は明かしていない。)

2014年、ワインスタイン氏は、嘱託社員として1日のみ働いた学生のエミリー・ネスターさん(Emily Nestor)をペニンシュラホテルに呼び出した。今まで彼が寝てきたという有名な女優の名前を、次々と挙げ、もし彼の性的な要求を受け入れたなら、キャリアを後押しすると持ちかけられたという。

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2015年、22歳のイタリア人モデルが、トライベッカフィルムセンターで胸を触るなどの痴漢行為をされたとして、警察に被害届を出していたが、これは罪に問われることはなかった。
ワインスタイン氏は、裸の状態で、泣いて動揺している女性のアシスタントに、マッサージを無理強いすることもあったという。
女優のローズ・マッゴーワンさんは、1997年に彼女が23歳の時に受けたセクハラで、10万ドル(約1,100万円)で和解が成立させている。

業界に入るきっかけを作ろうとする、20代の若い女性がターゲットになり、ハリウッド、ニューヨーク、ロンドンなど、様々な場所でセクハラ行為が繰り替えされたという。

ミラマックス前社長のマーク・ギル氏(Mark Gill)は、「外から見ると、オスカーを獲得し、素晴らしい文化的な影響を及ぼし、ゴールドのように光輝いているように見えるが、裏では、めちゃくちゃだった。ワインスタイン氏の女性への行動は常に最悪だった。」とNYTのインタビューに回答している。

セクハラを謝罪するも提訴の構え

ワインスタイン氏は、ハリウッドレポーターに、「面白い話だ。(映画化の)権利を買いたいくらいだね」と語っていたという。
またNYTに対しても「仲間への振る舞いが、多大なる苦痛をもたらしていたことが分かった。真摯に心から謝りたいと思っている。」と反省の弁を述べ、「長い道のりとなるのは分かっているが、良くなろうと思っている。」と声明を出した。また、セラピーを受け、休職することを発表した。

一方で、ハリウッドレポーターは、ワインスタイン氏が2人の弁護士、チャールズ・ハーダー氏(Charles Harder)とリーサ・ブルーム氏(Lisa Bloom)を雇い入れたと発表。

ともに米国では良く知られた弁護士で、ハーダー氏は、ハルク・ホーガンvsゴシップメディアのゴーカー(Gawker)の裁判や、メラニア夫人vsデイリー・メールへの訴訟を担当している。
また、ブルーム氏は、FOXニュースの名物キャスター、ビル・オライリー氏(Bill O’Reilly)のセクハラ疑惑で、被害にあった女性らを擁護し、FOXニュースの看板番組を降板させている。トランプ氏や、ビル・コスビーなどのセクハラ事件でも、被害女性を弁護する側に立っており、セクハラ問題に強い弁護士だが、今回ワインスタイン氏の弁護を行うとあって、世間を驚かせている。(ワインスタイン氏は、ブルーム氏の著作の映像化権を買っている)

ブルーム氏は、朝のテレビ番組「Good Morning America」に登場。キャスターは、セクハラのテキストブックに出てくるような(典型的な)内容だと非難。ブルーム氏は、彼の行動は法律違反で、けがらわしいが、セクハラの事実を認めて反省している、と語った。彼女自身は、いかなるセクハラも容認しないとしており、今回の件に対しては、アドバイザーという立場で弁護を行うと説明した。
(7日、ブルーム氏は、ワインスタイン氏の弁護士を辞任すると発表している)

一方、ワインスタイン氏は、ハーダー氏とともに、NYタイムズの記事は、噂や会社から盗まれた人事ファイルを元に書かれており、多くの誤りがあると否定。5千万ドル(約55億円)の損害賠償金を求めて、NYタイムズを提訴する準備をしていると、ハリウッドレポーターに語った。

ワインスタインカンパニーの反応

5日の記事が発表された後、TWCの役員らは緊急会議を行ったという。全体の3分の1の役員の辞任を発表した。また第三者機関の弁護士を雇い、調査を行うと発表。

ハーヴェイ・ワインスタイン氏のキャリア

ニューヨークのクイーンズ生まれ。ハーヴェイ・ワインスタイン(Harvey Weinstein)氏は、弟のボブ・ワインスタイン氏とともに、ミラマックス(Miramax)を設立。「パルプ・フィクション」(Pulp Fiction)、「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」(Good Will Hunting)、「トレインスポッティング」などの大ヒットインディー系映画を世に送り出してきた。
1933年にディズニーが、ミラマックスを買収。2005年に、ワインスタイン兄弟は「ワインスタイン・カンパニー」(The Weinstein Company)を設立。「英国王のスピーチ」(The King’s Speech)や、「ジャンゴ 繋がれざる者」(Django Unchained)、「世界にひとつのプレイブック」(Silver Linings Playbook)などを製作し、これまでに6つの作品で作品賞を受賞している。

セクハラ疑惑の一方で、ワインスタイン氏の別の側面についてもNYTは紹介している。2015年、大学のキャンパスで起こったレイプ事件を描いたドキュメンタリー映画「ハンティング・グラウンド」(The Hunting Ground)を配給。
大統領選では、マンハッタンの自宅で、民主党のヒラリー・クリントン氏の基金集めを実施。今年は、オバマ前大統領の長女、マリアさんをインターンで企業に雇い入れている。1月にサンダンス映画祭の開催中に実施されたウィメンズマーチにも参加するなど、公には活動家としての面も見せている。

プライベートでは、「マルケーザ」(Marchesa)のデザイナー、ジョージナ・チャップマン(Georgina Chapman)さんと結婚し、2人の子供をもうけている。また、前妻の間には3人の子供がいる。

内情を知る人からは賞賛の声も

ワインスタイン氏のセクハラ行為については、業界内では、既知の事実のようだが、今回のNYTの報道に、メディアからも賛同が寄せられている。

New York magazine、The Cutライター「17年間待ち望んでいた記事を、今読んでるなんて、信じられないわ」

Variety共同編集長「ブラボー!NYTのレポーターたち。何十年も私たちが追いかけてきたストーリーを公開してくれた」

8日、ワインスタイン・カンパニーは、ワインスタイン氏の(Harvey Weinstein)に解雇を通告した。

セクハラ暴露の映画プロデューサー ハーヴェイ・ワインスタイン解雇へ