#MeToo終わりの始まり?ジョニー・デップが名誉毀損裁判で勝訴

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ジョニー・デップ(58)と元妻で女優のアンバー・ハード(36)の間で争われた名誉毀損の裁判に関し、1日、バージニア州フェアファクス郡裁判所の陪審は、デップの主張をほぼ全面的に認め、ハードに1,500万ドル(約19.5億円)の損害賠償金の支払いを命じた(州の規定で、判事が1,035万ドルに減額)。

デップは裁判で、ハードが離婚後にワシントンポスト紙に掲載した論説が名誉毀損にあたると主張。これに対し、ハード側も反訴していた。一部については、ハード側の主張が認められ、陪審は、デップに200万ドル(約2.6億円)の賠償金を支払うよう命じた。

2人は2011年公開の映画「ラム・ダイアリー」で共演し、2015年に結婚した。ハードは翌年の5月、離婚と家庭内暴力に関する接見禁止命令の申し立てを申請。秋には、デップがハードに700万ドルの慰謝料を支払うことを条件に、離婚が成立した。

ハードは2018年12月、ワシントンポスト紙の論説投稿で、デップを名指ししなかったものの、性暴行の被害者であることを告白。#MeTooでセクハラを訴えた女性への連帯を示していた。

6週間に渡って行われた裁判でデップは、ハードを含む全ての女性に性的・肉体的暴行を振るったことは一度もないと述べ、むしろ暴行を受けたのは自分の方だと主張した。虚偽の告発によって、名声やキャリアなど「全てを失った」とし、裁判のゴールは「真実」を明らかにし、汚名をそそぐことだとしていた。一方ハードは、婚姻中に暴行を受けていたとし、別れる際も、キャリアを「破滅させる」などと脅されたと主張した。

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言論の自由失った

評決後ハードは声明で、デップ側の弁護団が陪審に対し「英国で勝訴した決定的な証拠をないがしろにし、言論の自由という重要な問題を見逃すことに成功した」と主張。さらに、「敗訴は悲しいが、アメリカ人が持つ、自由にオープンに発言する権利を失ったことをより悲しく思う」と発表した。

ハードはワシントンポストの論説について、自身の経験を語ることは、米国の憲法修正第1条の行使だと主張していた。

今回の敗訴は、「声を上げた女性が公共で恥ずかしい思いをさせられたり、自尊心を傷つけられたりした時代に逆戻りする」「女性に対する暴力を真剣に捉えるという考えの後退」を意味するとし、「非常に落胆している」と述べた。

SNSで賛否

評決に対し、大物映画プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインに対するセクハラの告発をきっかけに拡大した「#MeTooムーブメント」の終わりだと主張する声が上がった。

故ジョン・マケイン上院議員の長女で、保守派コメンテーターのメーガン・マケインは「#MeTooはおわった。米国自由人権協会はひどい仕事をした」とツイート(現在は削除)。

トランプ前大統領の長男、ドナルド・トランプ・ジュニアはツイッターで、「アンバー・ハード以外の全ての女性を信じる」とした上で、「無実を証明する前に全ての男性は有罪だと主張する活動的で熱烈なフェミニストの概念が、終焉を迎える可能性がある」と投稿した。

一方、ニューヨーク市で性犯罪や児童虐待の事件を扱ってきた元検察官で、非営利団体「Legal Momentum」の会長を務めるジェニファー・ベイカー氏は、ニューヨークポスト紙の取材に対し、「全てのサバイバーは、自分たちの経験を話す権利を有するべきで、報復のための訴訟やハラスメントについて、心配すべきではない」と語っている。