サシャ・バロン・コーエン フェイスブックはトランプ氏の「共犯者」、陰謀論拡散に警鐘

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大統領選を来月に控える中、コメディアンのサシャ・バロン・コーエン氏は、タイム誌に「陰謀論から民主主義を守らなければならい」と題した論説を寄稿。陰謀論が拡散する今日特有の問題に触れつつ、民主主義が存続するには、大統領選で「有権者が立ち上がり、嘘よりも真実を選択するかどうかにかかっている」と訴えた。

コーエン氏は冒頭、権力を手に入れ、他を服従させるために、嘘や陰謀が利用されることは今にはじまったことではないと説明。古くは、ユダヤ人がキリスト教の子供を殺害し、彼らの血を宗教儀式に用いているといった中世にまで遡るものから、黒人は遺伝的に劣っており、暴力的だといった白人至上主義者の考えのコアにある嘘。女性は生物学的にも、精神的にも男性と比べ平等ではないという嘘は、家父長制の永続という結果をもたらし、生後間もない赤ちゃんが処刑される事件が流行しているという嘘は、強姦や近親相姦の場合でも、中絶を認めない州を生み出すことにつながったと述べた。

しかしながら、「歴史上最も偉大なプロパガンダマシーン」のフェイスブックを「忠実な仲間」に従えたドナルド・トランプ氏が1日に23回も嘘をつくような今日は、これまでとは異なる危険に直面していると語り、現代特有の問題を指摘した。

トランプ氏が陰謀論を政治利用

コーエン氏は、トランプ氏は、政治で生き残るために、陰謀論を拡散して「オルタナティブな世界を回す」ことが必要だと明らかに考えている、と指摘。北京が意図的に”中国ウイルス”を蔓延させているや、新型コロナウイルスは恐れるにたらない、郵便投票では不正が行われるといった、トランプ氏のこれまでの発言を取り上げ、われわれが理性の時代の終わりにいるかのようだと述べた。

フェイスブック

コーエン氏は、マークザッカーバーグは「扇動政治家」の「自発的な共犯者」で、フェイスブックは史上最悪の独裁者が夢見た「メガフォン」だと主張。

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先日、フェイスブック幹部がポリティコに語った言葉を引用しながら「フェイスブックのアルゴリズムは、多くのエンゲージメントを生み出すコンテンツを意図的に拡散する」「右翼のポピュリズムは、常にエンゲージメントをもたらしている。なぜなら、それは怒りや恐怖、強さ、原始的な感情を誘発するからだ」と、アルゴリズムの問題について指摘した。

今月7日に発表されたリンク投稿のトップ10のうち6つが、FOXニュースやトランプ大統領など保守的な情報源からだったという。

このほか、コーエン氏はフェイスブックについて、Qアノンを禁止するとした10月6日の発表に触れつつ、「驚くことに白人至上主義者やホロコースト否定者にプラットフォームを提供し続けている」と非難。さらに、同社は政治広告や投稿についてファクトチェックを拒否していると述べたほか、抗議デモが過激化した5月末にトランプ氏が投稿した「略奪が始まれば、発砲が始まる」を未だに削除していないと、対応を批判した。なお同投稿は、暴力を扇動するものだとして非難が殺到。ツイッターは「暴力の賛美」のポリシー違反にあたるとして警告表示を行なっている。

不確実な時代

ある研究では、生活を自分でコントロールできなかったり、世界を理解するために答えを求めようとしたりする不確実な時代において、人々は特に陰謀論に影響をうけるという。パンデミックや経済危機、人種問題が噴出する米国において、コーエン氏は陰謀論が拡散する、最悪のタイミングだと述べる。

コーエン氏は、陰謀論は、われわれの健全性と民主主義にとって「致命的」だと警戒の必要性を強調。「民主主義の行方は、記録的な人数の有権者が立ち上がり、嘘にたいして真実を選択するかにかかっている」と述べた。1968年の民主党大会で、警察の暴力に対して抗議者が「世界中が見ている」と声を上げたように、今回は「デモクラシーが持ちこたえるか、独裁政治に陥るか」を世界が注視していると語った。