全土ミサイル攻撃 新司令官がプーチン氏に「素早く結果」示すため、ウクライナ軍情報機関

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ウクライナの通信社によると、10日朝にロシア軍が首都キーウを含むウクライナ全域に対して行ったミサイル攻撃では、少なくとも11人が死亡、64人が負傷した。

ロシアが発射したミサイルは80発以上で、ウクライナ空軍は43発を破壊することに成功した。また12機の自爆型ドローンのうち、9機を撃ち落としたとしている。

ヴァレリー・ザルジニー総司令官が被害状況を示した地図からは、全土が標的とされたことが確認できる。

ザルジニー氏は、ロシア軍は陸海空からミサイル発射したと説明。弾道ミサイル、地対空ミサイル、イラン製ドローン「Shahed-136」タイプの兵器が使用されたとした。

「ソ連時代の兵器を使ってこれらの攻撃を撃退しなければならないが、不足している。ウクライナとヨーロッパ全土の安全は、われわれの優れた戦士にかかっている」とさらなる兵器供与の必要性を強調した。

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同日、ウクライナのルスラン・ステファンチュク最高議会議長は、議会指導部に送った書簡で、米国に対して、その他の兵器と共に、地対空ミサイルシステム「NASAMS」の追加提供を優先的に求めるよう要請したと伝えられた。

ゼレンスキー大統領は先月25日、CBSニュースのインタビューでNASAMSを受け取ったと明らかにする一方、「信じて欲しいが、民間のインフラや学校、病院、大学、家を守るのには十分ではない」と追加配備の必要性を強調していた。

NASAMS(Norwegian Advanced Surface-to-Air Missile System)は、航空機やヘリコプター、巡航ミサイル、ドローンに対抗するようデザインされた中距離防空用の高度地対空ミサイルシステム。高価なアセットや人口密集地にも配備され、米国ではホワイトハウスと議会建物を守るために使用されている。米国のほか、フィンランド、オランダ、スペイン、オマーン、チリを含む世界12ヵ国で使用されているという。

2日前、ロシア国防省はウクライナの「特別軍事作戦」にセルゲイ・スロビキン大将を総司令官を任命したと発表していた。

ウクライナ軍情報総局のアンドリー・ユーソフ報道官は同国の国営メディアに、インフラ、特に民間のインフラ施設を狙ったミサイル攻撃は「彼のスタイル」と説明。プーチン大統領に「素早く結果を示すため」に実行したものとの見方を示し、「これらはテロ行為であり、ウクライナと世界はテロ国家を打倒するために団結しなければならない」と訴えた。

ロシア独立系メディアのMeduzaによると、スロビキン氏は2017年からロシア航空宇宙軍の司令官を務め、ウクライナ戦では、セヴェロドネツィクを陥落した「南グループ」を率いていた。

スロビキン氏(55)は、アフガニスタンでソビエト特別軍に従軍した経験を持ち、1991年(当時24歳)に失敗に終わったクーデターに加わり、数ヶ月間拘束された。傭兵組織のワグナーグループの創設者エフゲニー・プリゴジン氏は、今回の新人事の一報を聞き、「命令を受けた」スロビキン氏が、躊躇なく戦車に乗り込んで、国を救おうと駆けつけた」と当時を振り返ったという。

このほかに90年代は、タジキスタン内戦や第二次チェチェン紛争にも加わった。2017年にシリアでロシア軍の指揮官に任命され、同年10月にロシア航空宇宙軍の司令官に就任した。この2ヶ月後にシリアの功績からロシア連邦英雄の称号を与えられたという。

チェチェンの指導者ラムザン・カディロフ氏は9日、テレグラムのチャンネルに、スロビキン氏とは15年来の知り合いだと明かし、「真の将軍」だと説明。「ロシア軍は安泰だ」と任命を歓迎する意向を示した。

ロシア国営メディアRTは、スロビキン氏は強行で型破りな作戦をとることから、同僚の間で「アルマゲドン将軍」の愛称で呼ばれていると伝えている。