トランプ氏は「発言も行動も浅はか」元相棒マイク・ペンスが痛烈批判

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マイク・ペンス前副大統領が昨年1月の米議会議事堂襲撃事件以降、地上波では初となる米ABCニュースの独占インタビューに応じ、事件に絡むトランプ前大統領の言動をこれまでで最も強く非難した。

対談はインディアナ州にあるペンス氏の自宅で行われ、「ABC World News Tonight」のメインキャスター、デビッド・ミュアー氏がインタビュアーを務めた。14日に放送されたインタビューの中でミュアー氏は、昨年1月6日の議事堂襲撃の最中にトランプ氏が投稿したペンス氏に関するツイートに言及した。

事件があった昨年1月6日、議会議事堂ではジョー・バイデン氏勝利の大統領選結果を承認するため上下両院の議員が一同に会しており、副大統領だったペンス氏は議長として承認作業を取りまとめた。一方、トランプ氏は2020年11月にバイデン氏の当選確実が発表されて以降、選挙に不正があったと繰り返し主張し、自らの支持者に向けて1月6日の承認作業を妨害するため議会に乗り込み「強さを見せろ」と呼びかけていた。

支持者に向けてトランプ氏は、「ペンス氏には議長として結果の承認を拒否する権利がある」などとも主張。トランプ氏の発言を信じた支持者らは群衆となって議事堂を襲撃し、選挙結果を力づくで撤回させようとした。これにより承認作業は数時間遅れ、その最中にトランプ氏は、ペンス氏についてツイート。承認を拒否する「勇気」がない、と非難した。

<議会議事堂襲撃事件の様子>

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対談でミュアー氏は、「議事堂内に集まっていた議員らはバリケードを張って閉じこもった」と襲撃当時の様子を振り返り、「その最中、午後2時24分、トランプ氏はツイートで、『マイク・ペンスにはやるべきことをやるだけの勇気がなかった』とコメントした」とペンス氏に話を振り、当時の心境を聞いた。

ペンス氏は11秒間黙り込んだあとようやく口を開いて、時折無意識に右足を動かしながら「非常に腹が立った」と率直な思いを吐露。

再び5秒間の沈黙のあと、「しかし私は隣にいた娘を見て言った。『法を犯すために勇気がいるんじゃない。法に従うことに勇気がいるんだ』と」と語り、「トランプ氏の言うことは無謀だ。彼は明らかに、自分から問題の一部になることを決めた」と厳しい評価を下した。

混乱の最中にトランプ氏がツイートに興じていたことについては、自分はトランプ氏と一緒にいなかったので判断する立場にないとした一方、トランプ氏が「ペンス氏には選挙結果を覆す権利があった」と名指しで嘘の主張をしたことで、自分と家族が危険にさらされたと告白。「トランプ氏の発言は浅はかだし、行動も浅はかだ。この時のトランプ氏の言葉は私や家族や議事堂にいた人すべてを危険にさらした」と、トランプ氏を強く非難した。

今年の中間選挙では、共和党は予想に反して苦戦を強いられた。トランプ氏が推薦した候補者らは、勝利する者も多かったものの、重要州や接戦州で競り負けるケースが相次いだ。保守派の一部では、不振の原因をトランプ氏に求める声も上がっている。トランプ氏は2024年の大統領選で再選を目指す意向だが、共和党内では、ポストトランプのリーダーとして、フロリダ州知事選で20ポイント近い大差で勝利したロン・デサンティス氏に期待する声も大きくなっている。一方、トランプ氏はデサンティス氏を「デサンクティモニアス(Sanctimoniousは『偽善者』などの意)」などと呼んで対抗心を示す一方、2018年に知事に初当選できたは自分の功績だなどと主張している。

ペンス氏は15日、自伝「So Help Me God」を発表。著書では、自身の生い立ちや経歴、ホワイトハウスでトランプ氏とともに職務に務めた経験、そして議事堂襲撃を機にトランプ氏と決別することになったその経緯などがつづられている。