全米初 薬物投与施設がNYにオープン

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ニューヨーク市は30日、全米で初めて「過剰摂取防止センター」(Overdose Prevention Centers)を開設した。

薬物を安全に使用し、過剰摂取を防止することが目的。薬物を使用できるスペースのほか、清潔な注射針などの道具、オピオイド拮抗薬、依存症を治療するためのソーシャルサービスなどを提供する。なお、薬物は自分で持ち込む必要がある。

場所は、イーストハーレム(New York Harm Reduction Educators 住所:E. 126th Street)とワシントンハイツ(CORNER Project  住所:W. 180th Street)の2箇所。これまで、注射器を提供していた施設に設けられた。

デブラシオ市長は声明で「オピオイド危機に対応するための、安全かつ効果的な施設」と述べ、「最も脆弱な人々を保護するための正しい道」だと語っている。

施設の計画は、2018年に発表されていたが、クオモ前州知事やトランプ前大統領の反対により、ストップしていた。デブラシオ氏は当時、カナダやヨーロッパなどには、薬物の投与施設があるが、米国ではないと話していた。

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市保健精神衛生局は、施設を4箇所設置することで、年間で最大130人の過剰摂取による死亡を防ぐことが可能で、700万ドルの公衆衛生コストの削減につながると試算していた。

過剰摂取による死者数が増加

ニューヨークでは過剰摂取による死者数が増加傾向にある。市保健局によると、2021年1月から3月までの四半期で、過剰摂取による死者数は596人で、2000年に調査を開始して以来、最も多くなった。2020年は、2,000人以上が死亡し、過去最大を記録している。
なお米疾病対策センターは、2020年に全米で9万人以上が、過剰摂取で死亡したと、推定している。

ニューヨークポスト紙は、オープン初日にイーストハーレムの施設を利用したのは85人で、5人の過剰摂取があったと報じている。

施設の擁護者は、AP通信に対し、使用者が薬物使用の危険性を認識したり、過剰摂取から命を救ったりできるほか、公園などの公共スペースで、薬物を使用する人を減らすことできると話している。

一方、地元住民からは、反対の声も上がっている。イーストハーレムの自治会役員の1人、Eva Chan氏は、ニューヨークタイムズに対し、同地区での薬物使用者が多いのは、薬物の治療施設が密集しているからだと述べ、施設の開設に異議を唱えた。

ブルックリンとスタテン島の一部を代表するニコール・マリオタキス連邦下院議員(共和党・ニューヨーク)は、メリック・ガーランド司法長官に、施設の運営は連邦法違反だとして、停止を求めたことを明かした。

マリオタキス議員は、「納税者の資金で、ヘロインシューティング場を開設するのは、不適切」だと主張。「薬物の使用を奨励するだけでなく、将来の生活の質を低下させる」と非難した。